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免疫染色・ISH
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【免疫染色】原理別の工程をイラスト解説(賦活・ブロッキング・染色不良と解決法)

どっとゼブラ
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免疫染色の原理は以下の9種類があります。

  • 酵素抗体法
  • 蛍光抗体法
  • 直接法
  • 間接法
  • ABC法
  • LSAB法
  • (高分子)ポリマー法
  • PAP法
  • CSA法

各原理の詳細はこちら

この記事では試験に頻出の
❶酵素抗体法のポリマー法
❷酵素抗体法のABC(LSAB)法
❷蛍光抗体法
の重要工程を詳細解説します。

ぜひ試験対策にお使いください。

この記事の著者

どっとぜぶら
どっとぜぶら
細胞検査士
臨床検査技師
医学博士
Profile
・細胞検査士試験 1発合格
・12月からの勉強でMT国試150点

少しでも多くのMT, CT学習者の役に立ちたいと思いSNSなどで情報発信中。
テーマは【勉強ができない人はいない。やり方次第で誰でもできる!】
細胞診過去問解説集や病理の国試解説集を出しました。

1

高分子ポリマー法

【高分子ポリマー法の手順】

  1. 固定
  2. 脱パラ・脱キシ・親水
  3. 内因性酵素のブロッキング
    (水洗)
  4. 抗原賦活化
    (水洗)
  5. PBS洗浄
  6. 非特異的反応のブロッキング
  7. 一次抗体反応
    (PBS洗浄)
  8. 二次抗体反応
    (PBS洗浄)
  9. DABなどで発色
    (流水水洗)
  10. マイヤーのヘマトキシリンで核染
  11. 脱水・透徹・封入

高分子ポリマー法の詳しい原理はこちら

❶【固定液の特徴が重要!】組織や細胞の固定を行う

基本の固定液

組織診:10%中性緩衝ホルマリン
細胞診:95%エタノール

そのほか、以下のアルデヒドを含む固定液も有用とされます。

  • パラホルムアルデヒド液
    PLP液とザンボーニ液の構成要素。
  • PLP液
    免疫染色に有用であるが、糖鎖抗原の検出には✖️。
  • ザンボーニ液
    ピクリン酸を含むため組織が硬化しやすい。

この固定液の詳しい組成はこちら

免疫染色は固定時間も重要です。

固定時間の例
  1. 乳癌 HER2
    6〜72時間
  2. 肺癌 EGFR
    6〜48時間

このように何を行うかによって推奨時間が多少変化します。
2日〜3日と覚えておきましょう。

❷脱パラ・脱キシ・親水

組織の場合はパラフィン包埋されているため、パラフィンを溶かしてから水になじませていきます。
パラフィンとは?

2番目の脱キシはアルコールのことです。

❸【試薬が重要!】内因性酵素のブロッキング

体の中にはもともとペルオキシダーゼ(POD)やアルカリホスファターゼ(ALP)などの酵素が存在します。
この酵素を除去しないと余計な部分にも反応してしまうため、工程の序盤で除去します。

以下の図はPODを用いた免疫染色の場合のブロッキング方法です。

このままではすべてが染まってしまい、どこが目的の場所か分かりません
そこで内因性PODを除去すると・・・

除去したい内因性酵素の種類によって使用する試薬は異なります。

内因性PODとALP除去試薬
  • 内因性POD
    好中球、好酸球、赤血球などに多く、アルコール固定標本の方がホルマリン固定標本より活性が高い。
    【除去試薬】
    • 過酸化水素
    • 過酸化水素加メタノール
    • 過ヨウ素酸
    • アジ化ナトリウム
  • 内因性ALP
    ホルマリン固定パラフィン包埋切片では影響がなく、細胞診標本や凍結切片では必要。体腔液中の腺癌がもつALPは除去されにくい。
    【除去試薬】
    • レバミゾール

❹【方法と試薬が重要!】抗原賦活化

【抗原の賦活化】とは”抗原と抗体が反応しやすくなるようにすること”です
主な原因はアルデヒド系固定液で生じるメチレン架橋や有機溶剤など。

このような現象はマスキングとも呼ばれ、これを外す作業が【抗原の賦活化】です。

【賦活化の方法】熱処理 or タンパク分解酵素処理

抗原つまりタンパクは熱や酵素によって構造が変化します。
この構造が変化がマスキングを外します。

熱処理による賦活化

主に核内抗原の検出時に用いられるもので、以下の加熱方法がある。

  1. 電子レンジ
  2. オートクレーブ
  3. 圧力鍋
  4. 温浴槽 など

加熱による賦活を行う際は標本を緩衝液(pH6~7クエン酸緩衝液, pH8EDTA, pH9Tris-EDTAのどれか)に漬けた状態で行う。

加熱後、急速に冷やすとMIB-1などの核内抗原が偽陰性化するため室温でゆっくり冷ます必要がある。

タンパク分解酵素処理による賦活化

主に細胞質抗原の検出に用いられる。
95%エタノール固定の細胞診検体にはあまり使わない。
以下の酵素がある。

  1. トリプシン
  2. ペプシン
  3. プロテイナーゼK など

この処理を行うことで免疫染色が可能になります。

❺PBS洗浄

抗体との反応が近づいてきたら水は使わず、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を使います。

❻非特異的反応のブロッキング

理想は目的の場所だけに抗体を反応させたいですが、実際は関係ない部分にも反応します。

この関係ない部分への反応を抑えるのが【非特異的反応のブロッキング】です。
反応させたい抗体を添加する前にタンパク成分を敷き詰めることでブロックできます。

非特異的反応のブロッキング試薬
  1. (二次抗体と同じ動物の)正常動物血清
  2. ウシ血清アルブミン
  3. カゼイン など

❼一次抗体反応

目的の抗原にくっ付く一次抗体を反応させます。
反応後、付いてない抗体を除去するためにPBSで洗浄します。

この時に洗浄が不十分だと、非特異的な反応が増え偽陽性になるため注意。

❽二次抗体反応

ポリマー法では高分子ポリマーが結合した二次抗体を反応させます

反応後、結合していない抗体をPBSで洗います。
この時に洗浄が不十分だと、非特異的な反応が増え偽陽性になるため注意。

❾DABやAECで発色

酵素POD
基質DABAEC
反応原理酸化酸化
発色後の色茶色赤色
封入剤非水溶性水溶性
永久標本なるならない
POD:ペルオキシダーゼ
DAB:ジアミノベンチジン
AEC:アミノエチルカルバゾール

DABは発がん性(膀胱癌など)がある点にも注意。

反応後、発色反応を止めるために流水水洗します。

DAB発色時の増感方法

DABを用いた場合は感度を上げる増感方法が知られています。

  1. イミダゾール溶液
    DAB溶液に添加すると増感される。
  2. 重金属イオン水溶液
    DAB溶液に1%塩化コバルト水溶液、1%塩化ニッケル水溶液、1%硫酸銅水溶液を添加すると、それぞれ暗青色、紫青色、灰青色に発色する。
  3. クエン酸-酢酸アンモニウム緩衝液
    DAB溶解液としてクエン酸-酢酸アンモニウム緩衝液(pH 5.0)を用いる。
  4. オスミウム酸
    DAB発色後に1%オスミウム酸溶液で反応。
  5. メセナミン銀液
    DAB発色後、PAM染色液で反応。

❿マイヤーのヘマトキシリンで核染

免疫染色では進行性のヘマトキシリンで核を染めます

マイヤーの組成とゴロ
  1. 結晶性クエン酸
  2. 抱水クロラール
  3. カリウムミョウバン
  4. ヨウ素酸ナトリウム
  5. ヘマトキシリン
  6. 蒸留水

イラスト付きのゴロ100個はこちら

染めたら水洗します。

⓫脱水・透徹・封入

●DABは脱水・透徹して非水溶性封入剤で封入

●AECは脱水せずに蒸留水を通して水溶性封入剤で封入

2

LSAB(ABC)法

LSAB法の全体像
  1. 脱パラ・脱キシ・親水
  2. 内因性ペルオキシダーゼのブロッキング
  3. 流水水洗
  4. 抗原賦活化
  5. 流水水洗
  6. PBS洗浄
  7. 内因性ビオチンのブロッキング
  8. PBS洗浄
  9. 非特異的反応のブロッキング
  10. 一次抗体反応
  11. PBS洗浄
  12. ビオチン化二次抗体反応
  13. PBS洗浄
  14. 酵素標識ストレプトアビジン反応
  15. PBS洗浄
  16. DABなどで発色
  17. 流水水洗
  18. マイヤーのヘマトキシリンで核染
  19. 脱水・透徹・封入

1~11まではほとんどポリマー法と同じ
7番と12番以降を見ていこう!

内因性ビオチンのブロッキング

内因性ビオチンとはもともと体の中にあるビオチンのことです。
そして内因性ビオチンはあらかじめ除去する必要があります。

この画像のように先にアビジンとビオチンを反応させてやれば使えなくなります。

これで内因性ビオチンを消すことができるよ

この後は上述のポリマー法と同じように非特異的反応のブロックと一次抗体反応をさせます

ビオチン化二次抗体の反応

次は一次抗体にビオチンが付いた二次抗体を反応させます

反応後、くっ付かなかった二次抗体をPBSで洗い流します

酵素標識ストレプトアビジン反応

次にストレプトアビジンを反応させます

結合力が強いアビジンとビオチンをくっ付けます

そこにPODなどの標識物質をたくさん付けてやれば発色できます

標識物質をたくさん付けられるので感度が上がります

標識物質がたくさん付けられるから感度が高いんだよな

あとはポリマー法と同じようにPBS洗浄した後DABなどで発色します。

蛍光抗体法

最後に蛍光抗体法を見ていきましょう

LSAB法の全体像
  1. 凍結切片作製
  2. PBS洗浄
  3. 非特異的反応のブロッキング
  4. 一次抗体の反応
  5. PBS洗浄
  6. 蛍光標識二次抗体反応(遮光)
  7. PBS洗浄(遮光)
  8. 核染色用蛍光試薬の反応(遮光)
  9. PBS洗浄
  10. 水溶性封入剤で封入
  11. 蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡で観察

凍結切片作製

蛍光抗体法は通常のパラフィン切片ではなく凍結切片を使うことが多いです

まず、組織を水溶性包埋剤で包埋し、液体窒素などで凍らせます

その後クリオスタットで薄切します

切片をガラスに貼りつけた後、PBSで洗浄します

その後、他の方法と同じように非特異的反応のブロッキングを行います

一次抗体の反応

上述の他の方法と同様に一次抗体を反応させます

蛍光抗体法は一次抗体に標識物質を付ける直接法で行うことも多いです

直接法と間接法についてはこちら

ここでは間接法について説明していきます

一次抗体反応後はPBSで洗浄します

蛍光標識二次抗体反応(遮光)

蛍光色素が付いた二次抗体を反応させます

ここからは遮光して暗いところで行います

遮光しないと蛍光が減弱するよ!

抗体に付ける蛍光色素には種類があるので頑張って覚えましょう

蛍光色素の種類
  • FITC:緑黄色
  • Texas red:赤色

反応後、遮光した状態でPBS洗浄を行います

核染色用蛍光試薬の反応(遮光)

次に核も蛍光色素で染めます

核を染めるのは抗体に付ける蛍光と違うんだよな

核を染めるための蛍光色素は以下の通りです

核を染める蛍光色素
  • DAPI:青
  • Hoechst:青
  • Propidium iodide(PI):赤

これらの蛍光色素はDNAに直接結合するため核が染まります

反応後はPBSで洗浄します

水溶性封入剤で封入

蛍光色素を使った水溶性封入剤で封入します

封入剤の種類は覚えておこう!

水溶性封入剤
  • グリセリン・ゼラチン など
非水溶性封入剤
  • マリノール
  • マウインとクイック など

蛍光顕微鏡・共焦点レーザー顕微鏡で観察

蛍光をみるには特殊な顕微鏡を使う必要があります

  1. 蛍光顕微鏡
  2. 共焦点レーザー顕微鏡

この顕微鏡で励起光という光を当てて蛍光が光る状態にして観察します

まとめ

今回は知識を定着させるために各方法の工程を見ていきました

今までこの流れが分からなかったけど、一つずつ解決したら理解しやすくなった

免疫染色みたいに原理などの理解が重要なものは一つずつ解決すれば大丈夫!
あせらず確実に解決していこう!

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