みんなの病理の点数を上げる臨床検査技師、細胞検査士のどっとゼブラです!
今回はみんな苦手な免疫染色の酵素抗体法と蛍光抗体法を解説していきます!
みんな!今日も頑張ろう!
- 免疫染色がそもそも分からない
- 酵素抗体法と蛍光抗体法の違いが分からない
そもそも免疫染色ってなに?
免疫染色は通常見ることができないタンパクに色を付けて見えるようにする技術のこと
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目的としてるタンパクが無い場合、右画像は茶色に染まらないことになる。
色を付ければタンパクがどこにあるか分かる。そして名前の通り”免疫”反応を使って色を付け(染色)てるよ。
免疫反応って?
ここでいう免疫反応は抗体と抗原(タンパク)がくっ付く反応のことだよ
言ってる意味が分からない
・・・(なんか腹立つ)
分からない人もいると思うので基本的な原理をみてみましょう。
免疫染色の基本的な原理
まず、抗体というのは特定のタンパク(抗原)にくっ付くことができる。
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そして抗体に色が付くようにしてあげれば抗原(目的のタンパク)が間接的に色が付く(染色される)ことになる。
抗原なければ抗体がくっ付かなかないから色もつかない。だから抗原(目的のタンパク)の有る無しが分かるってことだね。
なるほどこれが基本的な原理か。基本的ということは他にも何か知っておくべきことがあるってこと?
まだまだある!たくさんあって苦手かもしれないけど、一つずつ解決していこう!
免疫染色はおおまかに3つに分けられます。
- 色の付け方
- 使う抗体の数
- 抗体にくっ付く物質など
今回はこの「1.色の付け方による分類」について覚えていきましょう。
色の付け方による分類
免疫染色の色の付け方には大きく分けて2つあります。
①酵素と基質を使ったもの
②蛍光色素を使ったもの
この抗体にくっ付いてる物質を“標識物質”とも呼ぶよ
酵素抗体法
それでは①酵素と基質を使ったものから見てみましょう。
まず酵素と基質の関係性について見ていきます。
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このイラストのような感じで酵素には特徴があります。
①酵素は基質と反応する
②酵素と基質はある程度組み合わせが決まっている
この関係性を踏まえたうえで酵素を使った免疫染色を見てみよう!
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抗体に酵素をくっ付けておくとそこに”基質“が反応して色が付きます。
その基質はその周辺に溜まっていくため、抗原に色が付いたように見えます。
この抗体に酵素をくっ付けて免疫染色するものを“酵素抗体法”と呼びます。
酵素の特徴で話したように、酵素と基質は組み合わせが決まっています。
使用する際は酵素と基質の組み合わせを考えて使います。
使う酵素と反応する基質の種類も覚えておこう!
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特に試験に出やすいペルオキシダーゼとDAB、AECの関係性は必ず覚えておこう!
じゃあこのペルオキシダーゼとDABを入れれば色が付くってことか
それだけでは色が付かない!試験によく出るPODの発色方法について詳しくみていこう!
PODと過酸化水素で発色(色を付ける)
POD(ペルオキシダーゼ)は過酸化水素の力を借りてDABやAECに色を付けます。
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PODと基質(DABやAEC)だけでは色を付けることができません。
じゃあ組織切片にPODとDABと過酸化水素入れればOKてことか。
色を付けるだけならそれでもOK。ただそれだけだと問題があるよ。
では、この問題とその解決法についても見てみましょう。
内因性ペルオキシダーゼと除去方法
一般的に体の中(組織の中)にはペルオキシダーゼ(POD)が既に存在しています。
この元々あるペルオキシダーゼを“ 内因性ペルオキシダーゼ ”と呼ぶよ!
この内因性ペルオキシダーゼを除去しなかった場合、このペルオキシダーゼにもDABが反応して関係ない部分にも色が付くことになります。
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つまりPODがくっ付いた抗体を入れなくても反応しちゃうってことか。一体どうすればいいんだ・・・
ここでさっきのPODの発色方法を思い出してみて
少し前に話したようにPODは過酸化水素と反応する。
そして酵素は反応したら使えなくなります。
つまりPODは過酸化水素を反応させてやれば使えなくなる。
通常、発色したいときにはPOD+DAB+H2O2を入れますが、それをすると内因性ペルオキシダーゼのせいで関係ない部分も染まってしまいます。
それを解決する方法は【 PODがくっついた抗体を入れる前に過酸化水素を入れる 】です。
先に過酸化水素を入れてあげて内因性ペルオキシダーゼと反応させて消します。
過酸化水素の他、過ヨウ素酸とアジ化ナトリウムも有効。
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確かにこれでいらないPODは無くなったな
この作業を“ 内因性ペルオキシダーゼの除去 ”って言うよ
これで必要な部分だけ発色する(色を付ける)ことができます。
DABとAECの特徴
ん?待てよ。でも何でDABとAECの2つがあるんだ?1つでよくないか。
次はこの悩みを解決するためにDABとAECの特徴について見ていきましょう
DABやAECは酵素と反応して色が付く基質。
この2つの基質の違いは次の3つです。
①色
②封入剤
③保存性
ではまず①色の違いを見てみましょう
DABは茶色 に AECは赤色 に染まるよ
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順天堂大学医学部附属練馬病院 臨床検査科 青木 裕志,浅見 志帆,鈴木 さやか,根本 明子
身体の中にはメラニン等茶色い物質も多くあります。
それが近くにある場合がDABの茶色と見分けるのが難しいため、AECで赤く染めると分かりやすくなります。
じゃあ全部AECで赤に染めればいいじゃないか
そうしたいけど、AECには重大な欠点もあるんだ
DABは水溶性で半永久的に保存することができます。
AECは非水溶性で永久保存は出来ません。
一回染めて永久に保存できた方がいいよね?
それはそうだな。
この水溶性のDABの封入剤は 非水溶性物質 を使います。
逆に非水溶性のAECの封入剤は 水溶性物質 を使うという特徴があります。
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酵素抗体法についてはこれでOK
次は蛍光抗体法についてみてみよう
蛍光色素を使った免疫染色(蛍光抗体法)
酵素使うと何だかめんどくさいな。もっと簡単な方法ないのか。
蛍光抗体法っていうのがあるからみてみよう!
免疫染色には蛍光抗体法という色の付け方があります。
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この方法について見ていきましょう。
この方法は基本的に蛍光がついた抗体をくっ付けるだけでOK。
それだけ目的のタンパクが光って見える簡単な方法です。
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この方法の利点は以下のようなものです。
- 暗い中で光るから小さいものでも見つけやすい(感度が高い)
- 酵素を使わないからペルオキシダーゼなどの 内因性物質の影響を受けない
- DABや過酸化水素などを使った 発色操作が不要
利点しかないじゃないか。じゃあこっちだけでいいのに。
実は欠点もあるから見てみよう。
蛍光抗体法の欠点は次のようなものです。
- 蛍光顕微鏡が必要
- 背景が暗い
- 永久標本にならない
- 電顕に応用できない
蛍光顕微鏡が必要
蛍光物質の基本について見ていきましょう。
蛍光物質はただくっ付けただけでは光りません。
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この蛍光物質に対して励起光っていう光を当てることで初めてちゃんと光ります。
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これをするためには通常の顕微鏡ではダメで、励起光を出せる蛍光顕微鏡が必要になります。
一般的な器具が使えないのは面倒だな。
蛍光抗体法は背景が暗い
蛍光物質は光る物質なので暗いところで見る必要があります。
全体が真っ暗なので細胞の形や周囲の状況が分かりません。
光ってる部分が癌なのか正常なのか、分からないことが多いです。
逆に酵素抗体法は明るいところで見ることができるよ。
永久標本にできない
蛍光物質はどんどん蛍光が弱くなっていきます。
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永久標本にできない物質は水溶性封入剤で封入することが多い
蛍光色素の種類
蛍光色素の種類も国試に出るんだよなあ
抗体にくっ付けるための蛍光色素と核を染めるための蛍光色素は別々のものを使います。
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- FITC→緑黄色
- Cy3→赤橙色
- Texas red→赤色
- DAPI→青
- Hoechst→青
- Propidium iodide→赤
こんなにあったら多くて覚えられないな。
問題でよく出るのは FITC と DAPI だから最初はこの2つを覚えよう!
酵素抗体法と蛍光抗体法のまとめ
最後に酵素抗体法と蛍光抗体法を比較してみよう!
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この辺の特徴がよく出るから頑張って覚えてよう!
酵素抗体法と蛍光抗体法は分かった。これで免疫染色は完璧だな
いや、実はまだまだ大事なポイントがたくさんある。
次回は使う抗体の数と抗体にくっ付く物質による分け方を見ていこう!
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