【免疫染色イラスト解説❷】直接法、間接法、ABC法、LSAB法、ポリマー法の原理をわかりやすく解説


この記事では直接法、間接法、ABC法、LSAB法、ポリマー法の原理をイラストで解説していきます!
免疫染色は抗体の数と標識物で分類される
免疫染色は以下の3要素によって数種類に分けられます。
- 抗体の数の違い
- 感度を上げる方法の違い
- 抗体にくっ付く物質の違い
抗体の数によって直接法と間接法に分ける
免疫染色には使われる抗体の数によって2種類に分けます。
- 抗体を1つ使うもの
直接法 - 抗体を2つ使うもの
間接法
直接法は特異度が高く、感度が低い
直接法は標識物質が付いた抗体を抗原に直接結合させる方法。
抗原に結合する抗体を一次抗体と呼ぶ。
「直接法は一次抗体に標識物質が付いている」と表現できる。

抗体にくっ付いているもの。
具体的には酵素や蛍光色素が付いている。
- 間接法に比べて感度(小さいものを見つける能力)が低い
- 間接法に比べて特異度(目的物質だけ検出する能力)が高い
間接法は感度が高く、特異度が低い
間接法は抗原に一次抗体を結合させた後、さらに標識物がついた抗体をくっ付ける方法。
一次抗体に結合する抗体を二次抗体と呼ぶ。
「間接法は二次抗体に標識物質が付いている」と表現できる。

- 直接法に比べて感度(小さなものを見つける能力)が高い
- 直接法に比べて特異度(目的物質だけ検出する能力)が低い
- 感度が高い理由
一次抗体には二次抗体を複数結合させることができるため色がつきやすい。色がつくと目で見やすい。これが感度の高さとなる。 - 特異度が低い理由
間接法では抗体を結合させる回数が増える。工程が増えるとミス(本来結合した部位ではない部分への結合)が起きやすくなる。つまり特異度が低くなる。
二次抗体は一次抗体と違う動物を使う
二次抗体は一次抗体とは異なる動物種の抗体を用います。
一次抗体がウサギで作られた場合、二次抗体はウサギ以外の動物(例えばヤギやマウス)で作られる。
同じ動物種(ウサギ)では免疫寛容(自分に対して反応しないなど)が働き、自己抗体が作られにくいため、他の動物由来の抗体となる。
感度を上げる5つの方法
標識物質をたくさん付けることができれば見えやすくなり検出しやすくなります(感度が高くなる)。
標識物をたくさん結合させ、感度を上げる方法が以下の5つです。
- ABC法
- LSAB法
- (高分子)ポリマー法
- PAP法
- CSA法

今回はこの中でもよく使われる
❶ABC法
❷LSAB法
❸(高分子)ポリマー法
の3つを詳細解説します
ABC法(アビジン・ビオチン コンプレックス法)
アビジンとビオチンの非常に強力にくっ付く力を利用した方法。
この結合力は抗原抗体反応よりもはるかに高く、不可逆的である。
酵素などの標識物がたくさんあるため、感度を上げることができる。

- アビジン
卵白などに含まれる塩基性の糖蛋白。4つのビオチン結合部位があり、ビオチンと強力な結合が可能。 - ビオチン
水溶性ビタミンのビタミンB7(別名:ビタミンH)のこと。体内にも存在する。アビジンと強力な結合が可能。
- 直接法、間接法より感度が高い
- 内因性ビオチンのブロッキングが必要
- LSAB法より非特異的反応が多い
- LSAB法より分子量が大きく浸透力が悪い
内因性ビオチンの除去はアビジンとビオチンを使う
内因性ビオチンとはもともと体の中にあるビオチンのことです。

この内因性ビオチンがABC法やLSAB法の時に反応してしまうため、事前に除去する必要がある。
下画像のように事前にアビジンとビオチンを反応させれば除去できます。

LSAB法(ラベルド・ストレプトアビジン・ビオチン法)
ABC法と似た方法。
ABC法がアビジンを用いるのに対し、LSAB法ではストレプトアビジンを用いる。

放線菌の一種であるStreptomyces avidiniiから得られるアビジン様のタンパク。通常の亜美人と比較して❶非特異的反応が少ない❷分子量が小さいため浸透力が良いなどの違いがある。
- ABC法より感度が高い
- 内因性ビオチンのブロッキングが必要
- ABC法より非特異的反応が少ない
- ABC法より分子量が小さく浸透力が良い
ポリマー法(高分子ポリマー法)
高分子ポリマーにたくさんの標識物質が付いた高感度な免染方法。

デキストラン(多糖類の一種)やアミノ酸(タンパク質)など、モノマーが多数連なってできた分子量の大きな化合物。免疫染色では、こうした高分子ポリマーに酵素や二次抗体を多数結合させた「ポリマー試薬」が用いられ、シグナル増幅や高感度検出ができる。
一次抗体と二次抗体をもう一つの抗体(ブリッジ抗体)追加する3ステップポリマー法もあり、2ステップよりも感度が高い。
上の画像は2ステップポリマー法を想定している。
- LSAB法より感度が高い
- ABC法やLSAB法より染色工程が少ない
- 内因性ビオチンのブロッキングが必要ない
- 分子量が大きく浸透が悪い
※最近は分子量の小さい浸透が良いものもある
7つの免疫染色と感度の順番
免疫染色をまとめると以下の方法がある。
- 直接法
- 間接法
- PAP法
現在はあまり使われない方法であるため原理などは知らなくても良い。 - ABC法
- LSAB法
- ポリマー法
- CSA法
ビオチン標識タイマライドを用いる超高感度な方法。
これらの方法を感度順に並べると以下のようになる。
直接法<間接法<PAP法<ABC法<LSAB法<ポリマー法<CSA法
免疫染色まとめ

免疫染色法の進化が一目でわかる比較表
方法名 | キーワード | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
直接法 | 一次抗体+標識物 | 工程が最短 特異性が高い | 感度が低い |
間接法 | 一次+二次抗体 | 感度が向上 汎用性が高い | 工程が増える 非特異反応のリスク |
ABC法 | アビジン・ビオチン | 高感度 | 内因性ビオチン対策が必要 |
LSAB法 | ストレプトアビジン | 低バックグラウンド 高S/N比 | 内因性ビオチン対策が必要 |
ポリマー法 | 高分子ポリマー | 現在の主流 超高感度 工程が簡便 | 浸透性が課題になる場合も (改良品あり) |
感度の高さの順番
直接法<間接法<PAP法<ABC法<LSAB法<ポリマー法<CSA法