今回は 循環障害 について。
これには①局所的なもの②全身性のものの2種類がある。
その中を細かく見ると全部で9つ。
それぞれイラストで確認していこう!
- 充血
- うっ血
- 虚血
- 血栓症
- 塞栓症
- 梗塞
- 浮腫
- 傍側循環
- ショック
一つずつ確認していきましょう!
局所的な循環障害
局所的な循環障害とは部分的に血流の流れが良くない状況にあること。
この障害には次のようなものがある。
- 充血
- うっ血
- 虚血(貧血)
- 出血
- 血栓症
- 塞栓症
- 梗塞
一つずつ確認していきましょう。
(出血は知っていると思うので省略)
充血
動脈の拡張によって動脈血量が増加した状態。
充血部分の特徴として以下のものがある。
- 赤くなる
- 温度が上昇する
- 腫脹する
多くは可逆性で原因がなくなるとおさまる。
充血の影響は少ない
浮腫や出血を起こすことがある。
うっ血
静脈の出口側の障害によって流れが悪くなり、静脈血が増加した状態。
覚えたい「疾患とうっ血」には以下のものがある。
- 左心不全と肺うっ血
- 右心不全とうっ血性肝障害
- 肝硬変と複数の障害
その他名前は知っておきたい、うっ血で起きるものはこちら⬇️
- 温度の低下
- 出血
- 細胞の萎縮・変性
- チアノーゼ
- 肺水腫
- 褐色硬化
- にくずく肝
- ガムナ・ガンディ結節
左心不全と肺うっ血
肺への血流は
①右心臓
②肺
③左心臓
の順で流れる。
左心不全になると左の心臓に血液が流れにくくなる。
そのためその前の臓器である肺に血液が溜まり、うっ血する。
肺うっ血になると血管壁が障害されて水分や赤血球が肺胞内へ漏れ出る。
その赤血球を食べたマクロファージを心臓病細胞と呼ぶ。
赤血球には鉄が含まれるため心臓病細胞も鉄を含むことになる。
つまり心臓病細胞はベルリン青で染めると分かりやすくなる。
右心不全とうっ血性肝障害
肝臓の血液は下大静脈を通って右心房に戻る。
右心不全が起きると、下大静脈が影響を受けてさらに肝臓も影響を受けてうっ血する。
すると肝臓の中心静脈周辺が暗赤色になる。
この状態を”にくずく肝”と呼ぶ。
肝硬変と複数の肝障害
肝臓には門脈を介して様々な器官の血液が流れる。
肝硬変が起きるとうっ血によって次のような障害が起きる。
- 食道静脈瘤・胃静脈瘤
- 脾腫による脾機能亢進
- 腹水貯留
- 直腸静脈瘤
- 腹壁下静脈怒張(メデューサの頭)
- 肝性脳症
虚血
部分的に血液が減少し、周囲の組織に酸素や栄養を渡せない状態。
原因としては以下のものがある。
- 血管攣縮
- 動脈硬化
- 血栓
- 塞栓
- 腫瘍
基本的には血管の内腔が狭くなるようなもので覚えればよい。
血栓症
何らかの原因で血管内に血液の塊ができることがある。
これを血栓と呼び、血栓ができた状態を血栓症と呼ぶ。
血栓ができる要因としては以下のものがある。
- 血液の停滞
- 血管内皮の障害
(外傷、火傷、動脈硬化、腫瘍など) - 凝固亢進
- 心疾患
(心筋梗塞、心不全、心房細動など) - エストロゲン増加
- 脂質異常症
- 喫煙
この血栓ができると虚血の原因となる。
塞栓症
血管内で発生したもしくは血管外の物質が血流にのって止まって血管内腔を閉塞することがある。
この閉塞する物質を塞栓(栓子)と呼び、閉塞した状態を塞栓症と呼ぶ。
静脈発生の塞栓
静脈に発生した塞栓は肺動脈で塞栓症を引き起こすことが多い。
全身の血液の流れは以下のとおりである。
- 左心室
(広い)
- 大動脈
(太い) - 動脈
(普通の太さ) - 毛細血管
(細い) - 静脈
(普通の太さ) - 大静脈
(太い) - 右心房
(広い) - 右心室
(広い) - 肺動脈
(太い~徐々に細くなる) - 肺静脈
(細い~徐々に太くなる)
上の流れで静脈の次に細い血管は肺動脈付近である。
つまり血流的に静脈に発生した血栓が引っ掛かりやすいのは肺動脈となる。
そのため静脈発生の塞栓は肺動脈塞栓症を引き起こしやすい。
塞栓の原因
塞栓の原因としては以下のようなものがある。
- 血栓
- 脂肪
- 潜函病の気泡
- 悪性腫瘍
- 細菌の塊
血栓による塞栓症
血栓が剥がれて別の場所で血管を閉塞することがある。
このようにして血栓による塞栓症が生じる。
脂肪による塞栓症
血管内に脂肪があるとそれが詰まり血管を閉塞することがある。
このようにして脂肪による塞栓症が生じる。
潜函病の気泡
潜水時の高気圧状態から急浮上して減圧すると体内にある窒素が気泡に変化することがある。
この気泡が塞栓となる。
梗塞
動脈内腔が強く狭窄する、もしくは閉塞によって血流が滞り周囲組織に酸素や栄養を渡せない状態。
他の血管との繋がりが無い場合は壊死する。
梗塞の原因には以下のようなものがある。
- 動脈硬化
- 血栓
- 塞栓
これらには次のような関連がみられる。
出血性梗塞と貧血性梗塞
梗塞には貧血性と出血性の2種類がある。
梗塞と壊死
梗塞が起きると壊死が生じる。
壊死の種類は以下のものを覚えたい。
- 凝固壊死
(ほとんどの組織はこの壊死) - 融解壊死
(脳で起きる) - 乾酪壊死
(結核で起きる)
梗塞と線維化
梗塞した後は壊死と膠原線維の増生がみられる。
これを確認するために膠原線維を染める染色が有効
全身性の循環障害
全身性の循環障害とは循環障害によって全身様々な部分で障害が起きること。
この障害には次のようなものがある。
- 浮腫
- 傍側循環
- ショック
- 高血圧症
浮腫
血管、リンパ管外(組織)に水分が貯留した状態のこと。
組織間にみられるものは水症、体腔に見られるものは腔水症と呼ぶ。
浮腫の原因として以下のようなものがある。
- 肝硬変
- 静脈圧亢進
(門脈圧亢進症など) - リンパ管閉塞
- 心不全
肝硬変と浮腫
以下のような流れで肝硬変は浮腫を起こす。
- 正常肝はアルブミンを作り血管に出す
- アルブミンが血管内に水を引っ張る(膠質浸透圧)
- 肝硬変になると肝臓がアルブミンを作れない
- 血管内に水を引っ張れない
- 組織や体腔に水が溜まる
- 浮腫や腹水貯留がみられる。
このほか、門脈圧亢進なども腹水貯留に関与する。
濾出液と滲出液
貯留する液の性状によって以下の2つに分けられる。
濾出液(漏出液)
うっ血などの循環障害によるもの
- 外観
透明~淡黄色 - 比重
1.015以下 - 蛋白量
3g/dL以下 - リバルタ反応
陰性 - 出現細胞
マクロファージ
少数の中皮細胞
滲出液
炎症や腫瘍によるもの
- 外観
混濁 - 比重
1.018以上 - 蛋白量
4g/dL以上 - リバルタ反応
陽性 - 出現細胞
好中球、マクロファージ、リンパ球、中皮など細胞数が比較的多い
傍側循環
傍側循環とは
メイン血管の血流が阻害された時、サブ血管に血液を流すこと。
このサブ血管は普段あまり使われていない。
肝硬変時の門脈圧亢進症などで見られる。
ショック
急激な循環血液量の低下によって重篤な全身症状を示すこと。
原因によって以下のような種類がある。
- 出血性
出血による循環血液量が低下と血圧低下が原因。 - 心原性
心筋梗塞、心筋症などの心臓のポンプ機能低下にが原因。 - 敗血症性
細菌感染によって全身反応が起こり重篤な全身症状をきたしショックを起こす。 - エンドトキシンショック
グラム陰性菌のエンドトキシン(外膜にある)による低血圧などの惹起が原因。 - 神経因性
脊髄損傷によって生じる全身の血圧低下などが原因。 - 熱傷性
損傷組織の循環血液量低下、心拍出量低下などが原因。
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