ここでは 顕微鏡 の種類と基礎についてをイラスト解説。
国家試験はもちろん細胞診の試験対策としても使ってね。
電子顕微鏡については別記事で解説しています。
電子顕微鏡の重要事項解説はこちら
顕微鏡 の種類
覚えたい顕微鏡の種類は以下の6つ。
●明視野顕微鏡
●位相差顕微鏡
●微分干渉顕微鏡
●偏光顕微鏡
●蛍光顕微鏡
●共焦点レーザー顕微鏡
明視野 顕微鏡
病理検査や血液検査に使われる一般的な顕微鏡。
標本に均一な照明光を当てて標本を透過した光を観察する。
拡大限度は1000倍程度で分解能は150nm~200nm程度。
それより小さいウイルスなどは観察に適さない。
位相差 顕微鏡
無色の細胞 や 生きた細胞の観察に適する。
光の回析と干渉を利用して透明な標本に明暗のコントラストを付けて観察する。
アスベスト繊維の検出にも使うことがある。
微分干渉 顕微鏡
無色の細胞 や 生きた細胞の観察に適する。
光の屈折率と厚さの違いを利用して観察する。
偏光 顕微鏡
偏光という光を用いて偏光特異性のあるもの(結晶やアミロイドなど)を照明し、標本を透過した後の偏光の状態を、明暗のコントラストや干渉色による色の変化にして観察する。
蛍光 顕微鏡
X線、紫外線、可視光線(400~700 nm)などの光(励起光)を物質に照射すると、物質中の分子あるいは原子から蛍光が放出される。
その蛍光を観察する。
暗い背景の中に目的物が光って見えるため、感度が高い。
FISHやその他の蛍光染色標本に使用する。
共焦点レーザー 顕微鏡
試料面をスポット状のレーザービームで走査してその焦点面からの蛍光とは反射光の空間分布を記録し、コンピューターを通してその切片画像を再現することにより、X-Y平面およびZ軸上(深さ方向)の分解能が高い画像が得られる。
蛍光で染められた試料の三次元構造を把握できる。
顕微鏡 の構成
顕微鏡は種類の他、通常使う光学顕微鏡の構成や特性を覚える必要がある。
それぞれ見ていきましょう。
●接眼レンズ
観察するときに目で覗くレンズ。
●対物レンズ
標本に接するレンズ。
●レボルバ
対物レンズが付いている場所。
●ステージ
標本を載せる場所。
●コンデンサー
ステージ下にあるコントラストなどを変化させるもの。
●開口絞り
開口数を変更する絞り。
●視野絞り
視野の範囲を変更する絞り。
●微動ハンドル
ステージを上下に小さく動かすハンドル。
●粗動ハンドル
ステージを上下に大きく動かすハンドル。
顕微鏡 の3種類の距離
顕微鏡には以下の3つの距離がある。
①機械的鏡筒長
接眼レンズ取付面から対物レンズの取付面の距離が機械的鏡筒長
②同焦点距離
対物レンズの取付面から標本までの距離が同焦点距離。
③作動距離
対物レンズから標本までの距離が作動距離。
さらに知っておきたい 顕微鏡 用語
国家試験や細胞検査士試験のために以下の6用語の意味は最低限理解しておきたい。
- 対物レンズ
- 総合倍率
- 開口数
- 分解能
- 実視野
- 焦点深度
これらを詳しく見てみましょう。
対物レンズ
レボルバに付いている標本に近いレンズ。
倍率を変更するときはレボルバを回す。
対物レンズにはいくつかの概ね7つの情報が記載されている。
とりあえず何が書かれているかは知っておきたい。
- レンズの種類
- 倍率
- 補正系の種類
- 開口数
- 視野数
- カバーガラス厚
- カラーコード
対物レンズのカラーコード
カラーコードは倍率によって決められた色のこと。
以下のようになっている。
必ず覚えたい。
明るさと対物レンズ
対物レンズの倍率を上げると明るさが暗くなる。
総合倍率
顕微鏡の総合倍率は
接眼レンズの倍率×対物レンズ倍率
で計算される。
開口数
顕微鏡の様々な能力に関係する重要な値。
開口数が大きい、小さいでそれぞれの機能がどう変化する覚えよう。
開口数の大きさはコンデンサについている開口絞りで調整できる。
そして開口数は対物レンズの開口数の70~80%に合わせるのが理想的
コンデンサーとコントラスト
コンデンサーは上げ下げするとコントラストに影響する。
●上げるとコントラストが下がり
●下げるとコントラストが上がる
未染標本はコントラストを上げると見やすくなる。
開口絞りを開閉しても同じことがおきる。
分解能
「ごくわずかに離れた2つの点を2つとして見分けうる最小間隔」という定義。
(分解能は数値で表すが、分解できる点の距離で表すため数値が小さいほど分解能が良いということになる。)
対物4倍と40倍で比較すると下のようになる。
この分解能は開口数が大きいほど良い。
そのため高倍率レンズほど書かれている開口数が大きい。
実視野
接眼レンズで見えている部分が標本のどれくらいの範囲(直径)かを数値化したもの。
【実視野=接眼レンズの視野数÷対物レンズの倍率】で計算される。
(接眼レンズの視野数はレンズによって最初から決まっている)
例)
視野数20の接眼レンズと10倍の対物レンズを使用した場合
20÷1=2(mm)
となり、標本の直径2mmの範囲を見ている。
焦点深度
一気にどれくらいの深さまでピントが合うかの度合い。
一回でピントが合う深さが深い場合は焦点深度が深い
一回でピントが合う深さが浅い場合は焦点深度が浅い
この焦点深度は開口数と総合倍率に反比例する。
つまり倍率を上げると焦点深度が浅くなる。
顕微鏡 の操作方法
●ピントの合わせ方
●ケーラー照明の合わせ方
は知っておこう。
顕微鏡 のピントの合わせ方
必ずステージを下げながら行う。
上げながら行うと標本とレンズがぶつかり標本が破損する。
顕微鏡 とケーラー照明
ケーラー照明とは最高の条件で観察できるようにする方法のこと。
①コンデンサを一番上まで上げる
②視野絞りを絞って絞り像の輪郭がはっきりするまでコンデンサを下げる。
視野絞り像は中心にもってくる。
③少しずつ広げる
④視野絞り像が観察視野より少し広がるくらいまで広げる
その他の 顕微鏡 用語(細胞診必須)
細胞診ではその他以下の用語も出題される。
●フィルター
●収差
●対物レンズの種類
フィルター
顕微鏡で覚えたいフィルターは次の2つ。
①色温度変換フィルター
②NDフィルター(減光フィルター)
色温度変換フィルター
適切な色温度に変化するためのフィルター。
色温度とは光の色を絶対温度の”ケルビン(K) “で表したもの。
観察に最適な色温度は5500Kだが、光源としてハロゲンランプを使用した場合は色温度が3000~3400Kとなる。
このように観察に最適な色温度にならない場合、色温度変換フィルタを使って調節する。
NDフィルター(減光フィルター)
色温度を保った状態で明るさを調節するフィルター。
光源が明るすぎる場合、電圧を下げて暗くすると色温度が変化する。
電圧を下げると赤く、上げると青みが増す。
そういう場合にNDフィルターを用いれば色温度を保った状態で明るさの調節ができる。
収差
レンズによりつくられた像には理想的なものからのズレがあり、これを収差と呼ぶ。
収差には大きく2種類ある。
●色収差
光の色(波長)の違いによるズレ
●単色収差
波長ごとについて起こるズレ。
この中はザイデルの5収差が含まれる。
ザイデルの5収差には以下のものが含まれる。
対物レンズの種類でこれらの一部が除去できる。
①球面収差
像が全体的にぼけること
②コマ
像の周辺が尾を引いた彗星のようになること
③非点収差
点が点でなく棒のようになること
④歪曲収差
物体が糸巻状または樽状に歪むこと
⑤像面歪曲
中心部と周辺部のピントが違ってしまうこと
対物レンズの種類
対物レンズの種類で覚えたいのは3種類。
①アクロマート
赤、青の色収差を除去。
②プランアクロマート
赤、青の色収差と像面歪曲収差を除去。
③プランアポクロマート
赤、青、紫を含む色収差と像面歪曲収差を除去。
最もカラー写真撮影に適する。
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