今回は卵巣の解剖について。
看護師、検査技師、細胞検査士では婦人科のことについて問われることがある。
そのすべての基礎になる解剖を理解していこう!
今回の参考資料
・病気がみえるvol9 婦人科・乳腺外科 第4版 3,410円
・病気がみえるvol10 産科 3,960円
・標準組織学 各論 第5版 12,100円
・スタンダード細胞診テキスト第4版 9,900円
・細胞診を学ぶ人のために第6版 10,780円
・細胞診ガイドライン1婦人科・泌尿器2015年版 6,050円
・ラングマン人体発生学 第11版原著第13版 9,240円
女性生殖器の解剖
女性生殖器は内性器(卵管、卵巣、子宮、膣)と外性器(外陰)かでできてる。
この中で卵巣と卵管を合わせて付属器と呼んでるよ。
卵巣の発生
卵巣は未分化生殖腺から発生します
女性生殖器の中でも卵管、子宮、膣との発生とは違うので注意してね
卵巣って何してる器官?
卵巣は内分泌器官の一つ
内分泌器官といえば視床下部、松果体、下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、卵巣などがメインとなる。
しかし、胃腸、腎臓、心臓などもメインの仕事じゃないけど内分泌物を出すっちゃ出すので広義ではたくさんの臓器が含まれる。
卵巣は内分泌が一つのメインの仕事だからガッツリ内分泌臓器だよ!
卵巣のざっくり解剖
卵巣を半分に割ると上のような図になる。
表面に近い部分は皮質(卵胞や黄体がある部分)、内側は髄質(紫の部分)と呼ばれる。
皮質には各種卵胞や黄体、白体が見られ、髄質には血管が豊富。
卵母細胞の周りには顆粒層と卵胞膜という細胞が存在する。
内卵胞膜細胞は莢膜細胞とも呼ばれる。
顆粒層細胞はエストロゲンを分泌し、黄体はプロゲステロンを分泌する。
とにかくここでは顆粒層細胞からエストロゲン、黄体からプロゲステロンが出ることを覚えておこう!
表層上皮(胚上皮)
卵巣の一番表面の部分の上皮は表層上皮や胚上皮と呼ばれる。
表層上皮は単層立方上皮で覆われている。
卵巣がんはココから発生するものがほとんど!
卵巣がんの分類はどこから発生するかが重要だから覚えておこう!
卵胞の発育
将来、卵子になる細胞(原始生殖細胞)は胎生の早期(胎生3週末)に卵黄嚢の壁に出現する。
この細胞が胎生5週頃に、アメーバ運動をして卵巣の中に侵入し、卵祖細胞となる。
卵祖細胞は、胎生期間中に盛んに分裂を行い、数を増やし、
出生の前に最後の分裂を行って、全てが一次卵母細胞に移行する。
従って、生後の卵巣には卵祖細胞は見られない。
幼若な一次卵母細胞は1層の扁平な卵胞上皮細胞で包まれている。
これを原子卵胞という。
出生時には、一側の卵巣に20~50万個の一次卵母細胞が、
この原子卵胞という形で存在している。
原子卵胞はこの状態で、思春期を過ぎるまで十数年以上もの間発育を止めてしまう。
卵母細胞は、エオジンで淡紅色に染まる細胞質と、
丸く大きく明るい核を持つ細胞で、核小体が明瞭である。
はじめ20μmほどの大きさだが、成熟するにつれて大きになる。
二次卵胞
卵胞の成熟が進むと、卵胞上皮細胞が有糸分裂によって増加し、
単層から多層になり、顆粒層と呼ばれる層を作る。
この卵胞を二次卵胞と呼ぶ。
二次卵胞では卵母細胞と卵胞上皮の間にエオジンなどの酸性色素で染まり、
強いPAS陽性を示す均質な層が現れ、透明帯と呼ばれる。
透明帯の役割は、
①精子の透明帯への結合を導く受容体をもち、
②結合した精子の先体反応を誘導し、さらに、
③複数の精子の侵入を防ぐバリアーとしても働く。
卵胞膜も厚くなり、内外2層の内卵胞膜と外卵胞膜となる。
内卵胞膜は、上皮様の特別な細胞(莢膜細胞)に富み、
毛細血管が良く発達している。
外卵胞膜は膠原線維などに富んでいる。
顆粒層細胞間の小間隙であるコール・エクスナー小体が見られ、
中に卵胞液が入っており、後に大きな卵胞洞となる。
グラーフ卵胞
二次卵胞の卵胞上皮細胞は盛んに有糸分裂をして増殖し、
多層化してさらに厚い顆粒層を卵母細胞と透明帯の周りにつくる。
この細胞層は透過電顕で見ると隙間が見えるが、
細胞間隙の一部はやがて光顕でも見える大きさになり、
さらに融合して1つの大きな液腔(卵胞腔)となる。
このように袋状になった卵胞を
グラーフ卵胞と呼ぶ。
卵胞腔の中の液(卵胞液)が次第に増加し、
周囲の卵胞上皮細胞も増加を続けて、
直径2 cmを超える大きさになる。
成熟につれて卵母細胞はその片隅に押しやられ、
卵胞上皮細胞で覆われた卵丘をなして、卵胞腔に突出する。
透明帯に直近の1層の顆粒層細胞は背が高く、
きれいな放射状の配列を示すので、放線冠と呼ばれる。
思春期になると、原子卵胞のうち10個ほどが同時に成長を始めるが、
通常はその中で最も大きい首席卵胞だけが、排卵までこぎつける。
顆粒膜と卵胞膜
二次卵胞の初期に、周囲の結合組織の細胞(線維芽細胞)と膠原線維が集まってきて卵胞膜を作る。
卵胞上皮が多層化する頃、
卵胞膜には上皮様細胞からなり毛細血管網が良く発達した内卵胞膜(莢膜細胞)と
線維に富む外卵胞膜が区別されるようになる。
内卵胞膜(莢膜細胞)は、細胞質に脂肪顆粒を多く含み、ズダンⅢで赤染する。
この脂肪顆粒は、下垂体前葉の性腺刺激ホルモン(FSH)の投与によって著しく増加する。
大きいグラーフ卵胞では、内卵胞膜細胞(莢膜細胞)は、
紡錘形から立方形ないし多面体まであり、紡錘形のものは線維芽細胞様に見える。
この細胞はエストロゲンの前段階であるアンドロゲンまで合成するが、
それ以降は顆粒層細胞(顆粒膜細胞)に移動し、そこでアロマターゼによりエストロゲンに変換される。
外卵胞膜はコラーゲン細線維が多量に走る中に、線維芽細胞が扁平な形で重なっている。
この線維芽細胞は筋フィラメントを豊富に含んでおり、平滑筋とみなすべきかもしれない。
黄体
排卵後の卵胞は、ゆるんでヒダが寄った形になり、血液を含む液胞を囲む。
そして2~4日を経過すると、顆粒層細胞(卵胞上皮細胞)が大きくなり、
厚い層をなし黄体と呼ばれる組織を作る。
肥大した顆粒層の細胞は、核小体が明瞭な明るく丸い核を持ち、エオジンに淡染する。
豊かな細胞質を有する多面体の細胞で、顆粒層ルテイン細胞(顆粒層黄体細胞)と呼ばれる。
これは細胞質にルテインと呼ばれる黄色い脂質顆粒を含むためで、これが生の卵巣の滑面で黄体を淡黄色に見せる原因である。
顆粒層ルテイン細胞は、さらにズダンⅢに赤染する中性脂肪やコレステロールを含む顆粒を持つ。
一方、黄体化に際して内卵胞膜の細胞も大きくなり、細胞質に多量のルテインをたくわえるようになり、卵胞膜ルテイン細胞(卵胞膜黄体細胞)と呼ばれる。
この細胞の核は顆粒層ルテイン細胞よりはるかに小さく、クロマチンが密なため暗く見える。両ルテイン細胞はプロゲステロンを分泌する。
白体
妊娠が起こらない場合の黄体は月経黄体と呼ばれ、これは排卵後10~12日頃に急速に退化し始める。ルテイン細胞はついには消失し、線維素(フィブリン)がこれに置き換わるので、肉眼的には白い瘢痕組織となる。これが白体である。月経黄体は最盛期に直径およそ2 cmあるが、白体化が始まってから3週間で1 cm程度になり、6週間で顕微鏡でしか見えない小体と化してしまう。妊娠が起こると黄体は退化することなく増大を続け、盛んに黄体ホルモンを分泌する。両ルテイン細胞は月経黄体におけるよりずっと大きい。しかし、妊娠黄体も妊娠4ヶ月をピークとして徐々に退化し始める。これは妊娠が進むと黄体ホルモンが胎盤の絨毛から大量に分泌されるようになるため、黄体がその抑制効果を受ける。
さいごに
今回は看護師、臨床検査技師、細胞検査士に必須の卵巣についてでした。
細胞検査士を目指す人たちに向けた講義ではこの基礎知識を元に各細胞像などについても解説してます。
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それではみんな勉強頑張ってね
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