今回は 電子顕微鏡 について。
電子顕微鏡はよく分からないものの代表格。
ここでは何故それを行うのか解説しているので頭に入りやすい。
理屈で理解できれば忘れずに済むから見てみてね。
電子顕微鏡 とは
高分解能の顕微鏡のことで0.1nmの分解能をもつ。
(光学顕微鏡は200nm)
光学顕微鏡では見れない小さなもの(細胞小器官など)も観察できる。
電子顕微鏡で覚えるのは次の3つ
2種類の 電子顕微鏡
電子顕微鏡は以下の2種類が存在する。
●透過型電子顕微鏡(TEM)
組織を薄切して断面(細胞内部)を観察する。
●走査型電子顕微鏡(SEM)
薄切せずに組織や細胞表面を立体的にみる。
この2つにどういう工程があり、どんなものを使うか見ていきましょう。
※この記事では電子顕微鏡を【電顕】と記載するときもあります。
透過型 電子顕微鏡 の工程
透過型の工程は以下の通り。
①固定
電顕は前固定と後固定の2回固定を行う。
・前固定:グルタルアルデヒド
・後固定:オスミウム酸
②脱水
エタノール
※脱水はどの方法でも大体エタノール。
③置換
エタノールは包埋剤となじまないため、なじむ液で置換する。
パラフィン包埋法のキシレンみたいなもの。
酸化プロピレン(エチレンオキサイド)を使う。
④包埋
透過型電顕は薄切するため包埋が必要。
ビームカプセルにエポキシ樹脂(エポン樹脂)を入れて包埋する。
⑤熱重合(固める)
樹脂には熱をかけると急速に硬化するものがあり、エポン樹脂はその一つ。
包埋して熱をかけることで固めることができる。
⑥エポン樹脂ブロックのトリミング
ブロックの余分な部分をカミソリで切り落とす。
⑦ガラスナイフで薄切(準超薄切)
実際に使う切片を作る前に行う目的細胞を確認するための薄切。
ガラスナイフで薄切し、トルイジン青染色で染色して細胞を確認する。
⑧超薄切
確認できた細胞を本格的に薄切する。
電顕の薄切は超薄切と呼ぶ。
回転式のウルトラミクロトームでダイヤモンドナイフを使って行う。
⑨グリッドメッシュへ貼付
超薄切した切片はグリッドメッシュに張り付ける。
パラフィン切片をスライドガラスに張り付けるようなもの。
⑩電子染色
酢酸ウランとクエン酸鉛で染色する。
⑪観察
最終的に拡大像は蛍光版に投影される。
その投影像を観察する。
走査型 電子顕微鏡 の工程
走査型の工程は以下の通り。
①固定
電顕は前固定と後固定の2回固定を行う。
・前固定:グルタルアルデヒド
・後固定:オスミウム酸
②導電染色
試料表面の帯電を防ぐためにタンニン酸で処理することがある。
これを導電染色という。
③脱水
エタノール
※脱水はどの方法でも大体エタノール。
④置換
次の工程に進むためにエタノールを別の液で置換する。
置換液は酢酸イソアミルを使う。
(エタノールから直接行うことも可能ではある)
⑤乾燥
最終的に真空で処理をするため乾燥させる。
水分が残っていると真空中で組織が変形してしまうため。
臨界点乾燥法とt-ブタノール凍結乾燥法の2種類がある。
⑥試料台への装着
次の工程を行うために試料を試料台へ接着させる。
パラフィン切片をスライドガラスに張り付けるようなもの。
⑦金属イオン蒸着(コーティング)
走査型電顕は電子を当てて時にでる表面からの二次電子を検出する。
金や白金などの金属でコーティングすると二次電子の放出を高めて観察しやすくなる。
真空蒸着法とイオンスパッターコーティング法の2種類がある。
⑧観察
処理した試料を検出器で検出し、モニターで観察する。
2種類の工程のまとめ
2種類の工程をまとめると以下のようになる。
どちらに必要な工程で何が使われるのかを覚えよう。
※赤文字は過去に出題されたことがあるもの。
電子顕微鏡 が有用なもの
電子顕微鏡は以下の観察に有効である。
●腎疾患(特に糸球体)
●心疾患(ファブリー病など)
●神経内分泌顆粒
神経内分泌腫瘍が持つ顆粒。
これが確認できれば神経内分泌腫瘍であると断定できる。
●細胞小器官
電子顕微鏡 の細胞小器官像
国試には電子顕微鏡を出題することがある。
ただ、細胞小器官のミトコンドリア以外は出題されない。
【電顕画像が出題されたときはミトコンドリア】
とだけ覚えておきましょう。
実際下のような画像で出題されています。
楕円形の中に平行な線がたくさん見られる場合はミトコンドリアを考える。
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