【神経系の染色まとめ】❶クレシル紫❷クリューバー・バレラ❸ボディアン❹ホルツァー❺カハール❻PTAH

神経系の染色には❶神経細胞❷神経膠細胞❸髄鞘❹ニッスル小体❺神経原線維などを染める染色があり、それぞれの染色名や色素を覚える必要があります。
また、どんな疾患に有用かを知ることで、発展問題や模試にも対応することができます。
この記事ではそれら全てを解決できます。
ぜひ試験対策としてお使いください!
神経系の染色6つ
染色名 | 染色対象 主な試薬 | 切片厚 (μm) | 加温 |
---|---|---|---|
クレシル紫 (Cresyl Violet) | ❶クレシル紫 (ニッスル小体) | 5~10 | 有 |
クリューバー・バレラ (Klüver-Barrera) | ❶クレシル紫 (ニッスル小体) ❷ルクソール・ファスト青 (髄鞘) | 5~10 | 有 |
ボディアン (Bodian) | ❶プロテイン銀 (神経原線維) | 8~12 | 有 |
ホルツァー (Holzer) | ❶クリスタル紫 (星状膠細胞・線維) | 15~25 | 無 |
カハール (Cajal) | ❶アンモニア銀 (神経膠細胞) | 5~10 | 有 |
PTAH | ❶リンタングステン酸 ❷ヘマトキシリン (神経膠線維) | 3~4 | 有 |
まずはこれら【6つの染色が神経系の染色である】ということを認識できるようにしましょう。

神経系の染色は?と聞かれたら6種類が言えるようにしてね!
神経系染色の共通の特徴|❶切片の厚さ❷加温
一部例外はありますが、神経系染色の多くに共通する特徴は2つです。
- 切片を厚めに切る
(PTAH以外) - 工程に加温がある
(ホルツァー以外)
6つの染色名を覚えたらこの共通事項を覚えましょう。
ここまで覚えたら次は各染色のポイントをおさえよう。
クレシル紫染色

ニッスル小体と細胞核が紫に染まっている
- 切片を厚めに切る
(5~10μm) - クレシル紫でニッスル小体を染める
- 塩基性色素
- 加温する
(60℃)
ニッスル小体はクレシル紫だけでなく、以下の塩基性色素でも染まります。
- クレシル紫
- トルイジン青
- チオニン
クリューバー・バレラ染色

クリューバー・バレラ(Klüver-Barrera)染色では以下の3つを覚えましょう。
- 髄鞘とニッスル小体を染める
- 髄鞘はルクソール・ファスト青、ニッスル小体はクレシル紫で染める
- 加温する
(56℃) - 切片を厚めに切る
(5~10μm) - 脱髄や神経変性など中枢神経系の病変や構造変化を評価する

ボディアン染色
- 神経原線維を染める
- プロテイン銀を使う
- 加温する
(37℃) - 切片を集めに切る
(8~12μm) - アルツハイマー原線維変化や老人斑に有用
神経原線維は中間径フィラメントと微小管

神経原線維とはニューロフィラメント(神経細胞の中間径フィラメント)と神経細管(微小管)からなる線維です。
ボディアン染色では神経原線維が通っている、神経細胞体や突起(軸索、樹状突起)が染まります。
ボディアン染色はアルツハイマー原線維変化や老人斑に有用
アルツハイマー原線維変化はNFT(neurofibrillary tangle)とも呼ばれ、アルツハイマー病で見られます。
具体的には神経細胞内に異常なタウ蛋白(神経細胞内にある蛋白)が凝集してできる変化です。
アルツハイマー病では老人斑の出現も特徴です。
老人斑とはるアミロイドβ(Aβ)蛋白が細胞外に沈着したものです。

出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)/一部加工あり
矢印:ボディアン染色の老人斑
ホルツァー染色
ホルツァー(Holzer)染色は脳傷害時に増生する星状膠細胞の突起(線維、グリア線維)を観察する染色法です。
- 神経膠細胞、特に星状膠細胞を染める
- クリスタル紫で青紫に染まる
- 切片を集めに切る
- グリオーシスの検出に有用

カハール染色
カハール(Cajal)染色は星状膠細胞を染める染色です。
- 星状膠細胞を染める
- 厚めの凍結切片を使う
- アンモニア銀で黒く染める
- 加温する

PTAH染色
PTAHはリンタングステン酸ヘマトキシリン染色のことです。

PTAH染色は主に線維素や横紋を染めるものですが、神経膠線維や神経細胞も染まります。
- 神経膠線維:青紫
- 神経細胞:赤褐色
この染色は横紋を染める染色として画像問題の出題がありました。
まずは線維素や横紋の染色として覚え、余裕があれば神経膠線維と神経細胞も染まると覚えましょう。

神経系染色に関連する問題
問題66A46
小脳のKlüver-Barrera染色標本を次に示す。
矢印で示すのはどれか。
1. 砂粒体
2. Nissl小体
3. Russel小体
4. Mallory小体
5. アミロイド小体

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答え:2
【解説】
矢印がさす細胞は神経細胞の細胞体。
中央に黒紫に染まる核小体があり、その周りの白く抜けている部分が核、さらにその周りの顆粒状の紫色部分が細胞質です。- 砂粒体はカルシウムが主成分の石灰化物のこと。卵巣、子宮内膜の漿液性癌や甲状腺乳頭癌などで見られる。カルシウムを含むためコッサ反応が有用である。
コッサ反応の解説はこちら - この記事でも解説したように、クリューバー・バレラ染色はNissl小体が染まるため正解。
- Russell小体は形質細胞腫瘍の細胞質に見られる免疫グロブリンの塊。PAS反応に陽性を示す。
- Mallory小体は肝細胞癌などの肝疾患細胞の細胞質に見られる中間径フィラメントからなる小体。HE染色で好酸性に染まる。関連する特殊染色はあまり聞かない。
- アミロイド小体はアミロイドーシスなどで見られるアミロイドの塊。アミロイドの染色にはコンゴー赤やダイレクト・ファスト・スカーレットなどがある。
アミロイド染色の詳細な解説はこちら
- 砂粒体はカルシウムが主成分の石灰化物のこと。卵巣、子宮内膜の漿液性癌や甲状腺乳頭癌などで見られる。カルシウムを含むためコッサ反応が有用である。
問題67A58
神経組織の染色に用いないのはどれか。
1.Bodian染色
2.Klüver-Barrera染色
3.Nissl染色
4.orcein 染色
5.PTAH 染色
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4.orcein 染色
問題71P49
Nissl小体が染まる色素はどれか。
1.アニリン青
2.クレシル紫
3.クリスタル紫
4.アゾカルミンG
5.ルクソール・ファスト青
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2.クレシル紫