PR

【 薄切 】 学生がイメージしづらい知識をイラストで徹底解説

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

今回は 薄切 について。
あまり学校ではみることが少ないものだからなかなか覚えにくい。
ここでは可能な限りイラストにしてるからイメージできるようにしてみてね。

\病理の国試対策本が出ました!/

薄切 とは

検体を包埋した後、薄く切ることを薄切と呼ぶ。

薄切して薄くなったものを切片と呼ぶ。

固定の解説はこちら

脱脂・脱灰の解説はこちら

包埋の解説はこちら

なぜ 薄切 をするのか

診断を行うためには顕微鏡で検体を見る必要がある。

診断に使う顕微鏡は光を透過させることで試料を観察できる

光は試料を薄くしないと透過できない

そのために薄切する必要がある。

薄切 に使う機器

薄切をするにはパラフィンなどで包埋したブロックミクロトームが必要。

包埋の解説はこちら

ミクロトームとは

包埋剤で包埋されたブロックを薄く切る機械のこと。

ミクロトームは動きの違いで次の2種類に分けられる。
それぞれにはいくつか種類と特徴がある。

滑走式
ハンドルを引いて(滑走させて)薄切する。
包埋ブロックが固定で刃を動かす。

  • ユング型
    通常のパラフィン包埋ブロックの薄切に使う。
  • シャンツェ型
    通常のパラフィン包埋ブロックの薄切に使う。ユング型より小型。
  • テトランダー型
    セロイジン包埋やパラフィン包埋ブロックに用いる大型のミクロトーム。

特徴

①クロスローラーベアリング式が一般的

②引き角が変更可(基本は45°)

③比較的大きい組織も切れる

回転式
ハンドルを回転させて薄切する。
刃が固定で包埋ブロック(試料)を動かす。

  • ミノー型
    パラフィン包埋ブロック、凍結標本、電顕の薄切に使う。
  • ザルトリウス型
    凍結切片に使う。

特徴

①引き角が90°で固定

②連続切片が切りやすい

③クリオスタットに使われる

④電顕用ウルトラミクロトームに使われる

ミクロトームの刃

刃の先端の角度を刃角と呼ぶ。

角度が大きいと切れ味が悪く耐久性が高い。
角度が小さいと切れ味が良く耐久性が低い。

製品により角度に種類がある。

薄切 の引き角、逃げ角

薄切には重要な2つの角度がある。

その角度は引き角逃げ角と呼ばれる。

この角度の調整は刀台と呼ばれる刃を付ける場所で行われる。

引き角
ブロックにあたる時の刃の角度
 滑走式:45°
 回転式:90°

硬組織は45°、軟組織は90°が良い。

逃げ角
切った時のブロックと刃の角度
 滑走式:2~5°
 回転式:2~10°
※両方とも3~5°程度で覚えればOK

薄切 の方法(ポイント)

①粗削り
 組織の全体が出てくるまで不要な部分を削る作業。
 面が出る前は白っぽいが、組織でてくると光沢が出てくる。

②ブロックを冷やす
 冷やすことで切りやすくなる。
 組織によっては冷やさなくてもよい。

③本削り
 通常3~4μmの厚さに切る。
 以下の染色ではそれ以外の厚さで切る。

厚く切る染色

・神経系の染色:厚め(5~10μm)
 神経系染色のまとめ解説はこちら

・渡辺の鍍銀染色:厚め(6~8μm)
 渡辺の鍍銀染色の解説はこちら

●薄切のPoint
・切片の厚さには①薄切速度②温度などの条件で変化する。
・息や水蒸気を当てながら切る(静電気を除去する)。
・一定の速さで切る。
・脱灰が必要なものは粗削り後に表面だけ脱灰液に漬けて表面脱灰後に切る。

薄切 切片の不良原因

不良な切片には主に以下の4種類がある。

①まっすぐな傷
原因:刃の傷(硬いものを切ったなど)

②波打つ線(チャタリング)
原因:刃やブロックの固定不備など

③薄切困難(バラバラになるなど)
原因:パラフィン浸透不足

④厚さのムラ
原因:滑走路の錆などによる不安定な薄切速度

⑤しわや刃への付着
原因:部屋の温度や湿度

これを一つずつ見てみましょう。

切片のまっすぐな傷

石灰化など組織内の硬いものに当たり刃こぼれ(刃に傷がある)すると起きやすい。

国家試験64回AM47の画像に矢印を追加したもの

これは石灰化を選ばせる画像問題。
組織内のひび割れ(赤矢印)は硬い石灰化などで起こりやすい。
この様な組織を切ると刃に傷がついて切片全体に傷が入るようになる。

切片に波打つ線(チャタリング)

刃やブロックがミクロトームにうまく固定されていない場合、波打つように切片が切れる。

そのため、厚く切れた部分は濃く染まり、薄く切れた部分は淡く染まって見える。

この現象を チャタリング という。

薄切 困難

組織内には隙間がたくさんあるためそこを埋めるためにパラフィンを浸透させ包埋を行う。

包埋のイラスト解説はこちら

パラフィン浸透が不良の場合、組織が固まらずうまく切れない。
切片がボロボロになる。

切片 の厚さのムラ

一定のスピードで行うことによって均一な厚さの切片作製が可能となる。

1枚を切る時の速さを変えると一つの切片上で厚さが変わる。
1枚目と2枚目で速さを変えると1枚目と2枚目の厚さが変わる。

滑走路の錆や技術的な問題などで速さが安定しない場合に生じる。

その他、厚さに関しては以下のような現象も起きる。

厚く切りすぎると刃の上で巻きやすくなる

合わせて覚えたい。

切片のしわや刃への付着

切片のしわは室温が高い場合によりやすくなる。

刃への付着は静電気によるものが多く、乾燥によって生じる。
そのため蒸気や呼気を当てながら切ると軽減される。

薄切 後の処理

薄切後は次のような処理を行う。

①薄切した切片を水に浮かべて大きなしわを伸ばす。

②パラフィン融点の10~15℃低い温度のお湯に浮かべて細かいしわを伸ばす。

③ガラスに載せる。
 免染などは剥離防止スライドを使うと良い。

③パラフィン融点の10~15℃低い設定の伸展器に載せて乾かす。
 乾かすことで水分による気泡の発生を防げる。

コメント

  1. より:

    突然すみません。回転式と滑走式のイラスト逆ではないですか?

  2. アンパン牛乳 より:

    薄切困難の部分で質問があります。
    パラフィン浸透がうまくいかない場合切片がボロボロになるとかかれていますが、固定がうまくいってないではなく、包埋がうまくいっていないではないでしょうか。

    • コメントありがとうございます(‘◇’)
      切片がボロボロになる理由は、固定、脱水、脱脂、脱脂、脱アル、パラフィン浸透どの工程がダメでもあり得ると思います。
      ただ、パラフィン浸透以前の工程がダメな場合は結局パラフィン浸透がうまくいかないので、原因はパラフィン浸透不足に集約されるかなと思います。
      細かい点で言うと固定などの各工程がうまくいっていないともいえるし、大きくまとめると結局パラフィン浸透不足。
      そんなイメージです。
      包埋はパラフィン浸透後の包埋皿に組織を埋め込む作業のことなので、包埋がうまくいっていないからボロボロになるということは無いかなと思います。
      包埋がうまくいっていない場合は出る面に偏りがでるなどの現象が起きます。

      • アンパン牛乳 より:

        早急なご返信ありがとうございます。
        わかりやすく丁寧な解説をしてくださり、理解することができました。
        今後もどっとゼブラさんのわかりやすいまとめを参考に頑張ります。