好評!細胞検査士過去問解説集

【薄切】目的からミクロトームの種類・不良切片の原因まで薄切に関する全てをイラスト解説

どっとぜぶら
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ぜぶら
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今回は薄切について。

可能な限りイラストにしてるからイメージできるようにしてみてね。

この記事の著者

どっとぜぶら
どっとぜぶら
細胞検査士
臨床検査技師
医学博士
Profile
・細胞検査士試験 1発合格
・12月からの勉強でMT国試150点

少しでも多くのMT, CT学習者の役に立ちたいと思いSNSなどで情報発信中。
テーマは【勉強ができない人はいない。やり方次第で誰でもできる!】
細胞診過去問解説集や病理の国試解説集を出しました。

薄切とは検体を薄く切ること

薄切とは?

包埋した検体を薄く切ること。
薄切で薄くなったものは切片と呼ぶ

検体は採取してからまず固定が行われます。
次に脱水・脱脂・脱灰が行われ、パラフィン浸透後、包埋してから薄切します。

薄切は光を透過させるために行う

診断を行うためには顕微鏡で検体を見る必要があります。

診断に使う顕微鏡は光を透過して初めて観察できます
検体を薄くしないと光が透過できません。

そのために薄く切る(薄切)必要があります。

薄切にはミクロトームを使う

薄切をするにはパラフィンなどで包埋したブロックミクロトームが必要です。

5種類のミクロトームを覚える

ミクロトームとは?

包埋されたブロックを薄く切る機器のこと。

ミクロトームは動きの違いで❶滑走式❷回転式の2種類に大別されます。

❶滑走式ミクロトーム3種類

ハンドルを引いて(滑走させて)薄切する機器。

包埋したブロックを固定した状態で刃を自分で動かす。

出典:@大和光機工業
滑走式ミクロトーム3種類
  1. ユング型
    通常のパラフィン包埋ブロックの薄切に使う。
  2. シャンツェ型
    通常のパラフィン包埋ブロックの薄切に使う。ユング型より小型。
  3. テトランダー型
    セロイジン包埋やパラフィン包埋ブロックに用いる大型のミクロトーム。

【特徴

  • クロスローラーベアリング式が一般的
  • 引き角が変更可(基本は45°)
  • 比較的大きい組織も切れる

❷回転式ミクロトーム2種類

ハンドルを回転させて薄切する機器。

固定した刃に当たるように包埋ブロック(試料)を自分で上下に動かす。

出典:@大和光機工業
回転式ミクロトーム2種類
  1. ミノー型
    パラフィン包埋ブロック凍結標本電顕の薄切に使う。
  2. ザルトリウス型
    凍結切片に使う。

【特徴

ミクロトーム刃の角度は【刃角】と呼ぶ

刃の先端の角度を刃角と呼び、角度によって切れ味と耐久性に違いが出ます。

刃角による違い
  1. 角度が大きい
    切れ味が悪く耐久性が高い。
  2. 角度が小さい
    切れ味が良く耐久性が低い。

製品により角度に種類がある。

薄切には引き角と逃げ角がある

引き角:ブロックにあたる刃の角度

引き角とはブロックにあたる刃の角度のこと。
角度の調整は刀台と呼ばれる刃を付ける場所で行う。

切れ味や切片の質に影響し、以下のように滑走式と回転式で角度が異なります。

  • 滑走式:45°
  • 回転式:90°
薄切時の引き角を示す模式図。左は滑走式ミクロトームで刃がブロックに対して斜め(引き角45°)、右は回転式ミクロトームで刃がブロックに対して直角(引き角90°)に当たる様子を示す。
薄切における引き角の違い:滑走式は斜めに引いて切るため45°、回転式は直角方向に切るため90°となる

滑走式は引き角を変更することができます。

硬い組織は45°軟い組織は90°がに設定するのが良いです。

逃げ角:刃の下面とブロックの角度

逃げ角とは切った時の刃の下面とブロックの角度のことです。

薄切時の逃げ角を示す模式図。ブロック表面に対して刃がわずかに後傾し、刃先直後がブロックに当たらないようにする角度(逃げ角)が3〜5°であることを示す。
薄切時の逃げ角:刃先直後がブロック表面と干渉しないよう、刃をわずかに後傾させて3〜5°程度に設定する。

逃げ角は引き角と違い、滑走式でも回転式でも3~5°程度で覚えればOK。

  • 滑走式:2~5°
  • 回転式:2~10°

薄切の重要な工程3つとそのポイント

工程1
粗削り

組織の全体が出るまで不要な部分を削る作業。

面が出る前は白っぽいが、組織でてくると光沢が出てくる。

上画像の赤い部分は面が出ていない部分で白っぽい。

工程2
ブロックを冷やす

冷やすことで切りやすくなる。
組織によっては冷やさなくてもよい。

工程3
本削り

通常3~4μmの厚さに切る。
以下の染色ではそれ以外の厚さで切る。

厚く切る染色
薄く切る染色
薄切の4つのPoint
  1. 切片の厚さは
    ①薄切速度②温度などの条件で変化する
  2. 息や水蒸気を当てながら切る
    (静電気を除去する)
  3. 一定の速さで切る
  4. 脱灰が必要なものは粗削り後に
    表面だけ脱灰液に漬け(表面脱灰)た後に切る

4種類の不良な切片とその原因

不良な切片には主に以下の4種類がある。

  1. まっすぐな傷
    原因:刃の傷(硬いものを切ったなど)
  2. 波打つ線(チャタリング)
    原因:刃やブロックの固定不備など
  3. 薄切困難(バラバラになるなど)
    原因:パラフィン浸透不足
  4. 厚さのムラ
    原因:滑走路の錆などによる不安定な薄切速度
  5. しわや刃への付着
    原因:部屋の温度や湿度

切片のまっすぐな傷の原因と過去問

石灰化など組織内の硬いものに当たり刃こぼれ(刃に傷がある)すると起きやすい。

薄切時の傷の原因を示す模式図。組織内の石灰化部を刃が通過すると刃先が欠けて傷がつき、その後の薄切で切片表面に線状の傷が生じる流れを示す。
石灰化など硬い部分があると刃先が損傷し、その欠けた刃で切り続けることで切片に線状の傷が入る。

問題例

動脈の H-E 染色標本を別に示す。
矢印で示すのはどれか。
1.石 灰
2.ムコイド
3.類線維素
4.アミロイド
5.硝子様物質

出典:「第64回臨床検査技師国家試験問題および正答について」を一部改変
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html
Q
答えと解説はこちら

1. 石灰

組織内のひび割れ(赤矢印)は硬い石灰化などで起こりやすい。
この様な組織を切ると刃に傷がついて切片全体に傷が入るようになる。

刃やブロックの固定が緩いと切片に波打つ線(チャタリング)が生じる

  • 刃やブロックがミクロトームにうまく固定されていない
  • 逃げ角が大きい

などが原因で、切片が波打つように切れる。

厚く切れた部分は濃く染まり、薄く切れた部分は淡く染まって見える。
この現象を チャタリング という。

薄切困難はパラフィン浸透不良で生じる

組織内には隙間がたくさんあり、それを埋めるためにパラフィンを浸透させ包埋を行う。

パラフィン浸透が不良の場合、組織が固ってないためうまく切れない。
切片がボロボロになる。

固定、脱水中間剤の浸透がうまくいっていないとパラフィン浸透は不良になる。

切片厚のムラは薄切スピードが影響する

薄切を一定のスピードで行うことで均一な厚さの切片が切れる。

1枚を切る途中で速さを変えると、一つの切片上で厚さが変わる。
1枚目と2枚目で速さを変えると1枚目と2枚目の厚さが変わる。

滑走路の錆技術的な問題などで速さが安定しない場合に生じる。

また、厚く切りすぎると刃の上で巻きやすくなる

切片のしわは室温、刃への付着は乾燥

切片のしわは室温が高い場合によりやすくなる。

刃への付着は静電気によるものが多く、乾燥によって生じる。
そのため蒸気や呼気を当てながら切ると軽減される。

薄切後の4つの処理

水に浮かべる

薄切した切片を水に浮かべて大きなしわを伸ばす

お湯に浮かべる

パラフィン融点の10~15℃低い温度のお湯に浮かべて細かいしわを伸ばす

  1. 軟パラフィンの融点
    45℃~52℃
  2. 硬パラフィンの融点
    54℃~58℃
    (基本的にはこれが使われる)
ガラスに載せる

免染時などは剥離防止スライドを使うと良い。

伸展器に載せて乾かす

パラフィン融点の10~15℃低い設定の伸展器に載せて乾かす。
乾かすことで水分による気泡の発生を防げる。

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