【脂肪染色まとめ】❶ズダンⅢ❷オイル赤O❸ズダン黒B❹ナイル青

この記事では4種類の脂肪染色❶ズダンⅢ(Sudan Ⅲ) ❷オイル赤O(Oil red O) ❸ズダン黒B(Sudan black B) ❹ナイル青(Nile blue)について解説しています。
脂肪染色は他の多くの染色と違い、色素が無極性であることや、凍結切片を用いることなど、この染色ならではなポイントが豊富です。
そのため試験にも出しやすく、実際出題されています。
この記事では特徴的なポイントが全てまとまっており、これを見るだけで脂肪染色をマスターできます。
4つの脂肪染色の名称と染色結果まとめ
- ズダンⅢ(Sudan Ⅲ)
- オイル赤O(Oil red O)
- ズダン黒B(Sudan black B)
- ナイル青(Nile blue)

試験では【SudanⅢ】など英語表記の出題も多いから読めるようにしておこう!
全て脂肪を染めますが、脂肪の種類ごとに染色結果が違います。
染色名 | 染色結果 |
---|---|
ズダンⅢ | 中性脂肪:赤 |
オイル赤O | 中性脂肪:赤 |
ズダン黒B | 中性脂肪 コレステロールエステル:黒 リン脂質:黒 糖脂質:黒 脂肪酸:黒 コレステリン:暗青色 |
ナイル青 | 中性脂肪:赤 脂肪酸:青 リン脂質:青 コレステリンエステル:赤 肥満細胞:赤 |
これらの脂肪染色には5つの共通点があります。
試験に出やすいため、必ず覚えてください。
- 無極性色素(ナイル青以外)
- 厚めの凍結切片を使う
- アルコール固定は禁忌
- 染色工程にアルコールを含む
- 加温する
ズダンⅢ染色
ズダンⅢ(Sudan Ⅲ)染色のポイントは7つ。
- クリオスタットで厚めに切る
- 加温する
- 色素が無極性色素
- 物理的に染まる
- 染色工程にアルコール(エタノール)を含む
- 中性脂肪が赤く染まる
- 親水性封入剤で封入する
【ズダンⅢ】❶クリオスタットで厚めに切る
脂肪はアルコールやキシレンなどに溶けます。
そのため、それらを使わずに標本作製可能なクリオスタットで凍結切片を作製します。
パラフィンブロックでは標本作製過程にアルコールやキシレンがあり、脂肪が溶けるため検出できません。
クリオスタットで薄切する時は
【固定しない or ホルマリン固定】
が一般的です。
【ズダンⅢ】❷加温する
ズダンⅢ染色は37℃で加温します。
- 神経系の染色
- 脂肪染色
- Feulgen反応
- Masson-Fontana染色
- ヘルマン・ヘレルストローム
- DOPA反応
- Grimelius染色
- Warthin-Starry染色
- PAM染色
- Grocott染色
加温する染色のゴロ
顔が紳士なホイール持った魔法使い、
変などんぐりと悪いパン食べてグロッキー

- 顔(加温)
- 紳士(神経系染色と脂肪染色)
- ホイール(Feulgen 反応)
- 魔法使い(Masson-Fontana 染色)
- 変な(ヘルマン・ヘレルストローム)
- どん(DOPA反応)
- ぐり(Grimelius染色)
- 悪く(Warthin-Starry染色)
- パン(PAM染色)
- グロッキー(Grocott染色)
【ズダンⅢ】❸無極性色素である

病理で使う色素には❶酸性色素❷塩基性色素❸無極性色素があります。
脂肪染色の色素はほとんど❸無極性です。
- 水に溶けにくい
- アルコールに溶けやすい
- 荷電しない
【ズダンⅢ】❹原理は物理的な染色法
ズダンⅢなどの脂肪染色の色素は目的物質に物理的な結合をします。

その他多くの染色は化学的な結合で色を付けます。
例えば塩基性色素は水溶液中で陽性に荷電し、陰性荷電物質と結合します。

【ズダンⅢ】❺染色工程にアルコールを含む
ズダンⅢ色素はアルコールに溶けやすい無極性色素です。
アルコールを使わないと色素が溶けません。
アルコールに溶けた色素は一定の割合で脂肪にも移動します。
つまり、脂肪を見つけると色素は溶けてたアルコールから脂肪に移動します。
脂肪はアルコールに溶けるため工程にアルコールを含まないと思われがちですが、使われているので注意。

【ズダンⅢ】❻中性脂肪が赤く染まる
脂肪染色はいくつかありますが、それぞれ染めるものや色が違います。
SudanⅢ染色は中性脂肪を赤く染めます。
染色名 | 染色結果 |
---|---|
ズダンⅢ | 中性脂肪:赤 |
オイル赤O | 中性脂肪:赤 |
ズダン黒B | 中性脂肪 コレステロールエステル:黒 リン脂質:黒 糖脂質:黒 脂肪酸:黒 コレステリン:暗青色 |
ナイル青 | 中性脂肪:赤 脂肪酸:青 リン脂質:青 コレステリンエステル:赤 肥満細胞:赤 |
【ズダンⅢ】❼水溶性(親水性)封入剤で封入
封入剤は非水溶性と水溶性の2種類があります。
非水溶性封入剤は脂肪を溶かすため脂肪染色では使えません。
そのため脂肪染色では水溶性封入剤で封入します。

オイル赤O染色
オイル赤O(Oil red O)染色の特徴はズダンⅢ染色とほぼ同じです。
異なる部分だけ覚えておきましょう。
- クリオスタットで厚めに切る
- 加温する
- 色素が無極性色素
- 物理的に染まる
- 染色工程にアルコール(イソプロ)を含む
- 中性脂肪が赤く染まる
- 親水性封入剤で封入する
- ズダンⅢより色が濃く、親油性が高い
※色素以外でズダンⅢ染色との違いは、使用するアルコールの種類です。
SudanⅢ染色とほぼ同じですが、色素とアルコールの種類が異なります。

オイル赤染色でイソプロピルアルコールを使う理由
イソプロピルアルコール(2-プロパノール、イソプロパノール)は2つの効果があります。
- 色素の溶解性
- 脂肪への浸透性上昇

結果、中性脂肪が赤色に染まりやすくなります。
ズダン黒B染色
ズダン黒B(Sudan black B)染色はズダンⅢ染色やオイル赤O染色と違い、複数の色素が含まれ、物理的な染色と化学的な染色の2種類が関与しています。
そのため、中性脂肪だけでなくリン脂質、脂肪酸、糖脂質、コレステリンなど他の脂質成分も染まります。
染色名 | 染色結果 |
---|---|
ズダンⅢ | 中性脂肪:赤 |
オイル赤O | 中性脂肪:赤 |
ズダン黒B | 中性脂肪 コレステロールエステル:黒 リン脂質:黒 糖脂質:黒 脂肪酸:黒 コレステリン:暗青色 |
ナイル青 | 中性脂肪:赤 脂肪酸:青 リン脂質:青 コレステリンエステル:赤 肥満細胞:赤 |
- 色素は無極性色素と塩基性色素
- 物理的と化学的な原理で染める
- 切片を厚めに切る
- 凍結切片を使用する
- 染色工程にアルコールを用いる
- 加温する
- 親水性封入剤で封入
- 様々な脂質を黒または暗青色に染める
- 中性脂肪(黒)
- リン脂質(黒)
- 脂肪酸(黒)
- コレステリン(暗青色)

ナイル青染色
ナイル青(Nile blue染色)は塩基性色素のナイル青と無極性色素のナイル赤で脂質成分を染める染色法です。
ズダンⅢやオイル赤Oと同じ仲間の無極性色素はナイル赤なので、中性脂肪は赤く染まります。
それ以外の脂質成分をナイル青色素で染めます。
染色名 | 染色結果 |
---|---|
ズダンⅢ | 中性脂肪:赤 |
オイル赤O | 中性脂肪:赤 |
ズダン黒B | 中性脂肪 コレステロールエステル:黒 リン脂質:黒 糖脂質:黒 脂肪酸:黒 コレステリン:暗青色 |
ナイル青 | 中性脂肪:赤 脂肪酸:青 リン脂質:青 コレステリンエステル:赤 肥満細胞:赤 |
- 色素は塩基性色素と無極性色素
- 物理的と化学的な原理で染める
- 切片を厚めに切る
- 凍結切片を使用する
- 親水性封入剤で封入
- リン脂質と脂肪酸を青に染める
中性脂肪とコレステリンエステルを赤く染める
【ナイル青染色】2種類の色素〜ナイル青とナイル赤
ナイル青染色には❶ナイル青❷ナイル赤の2種類の色素が入っていると考えられています。
そしてそれぞれ染めるものが違います。
- ナイル青(無極性)
リン脂質と脂肪酸 - ナイル赤(塩基性)
中性脂肪とコレステリンエステル

脂肪染色で有効な疾患
脂肪染色では脂肪の蓄積が見られる以下のような疾患で有用です。
- 脂肪肝
- ファブリー病
(マルベリー小体) - リポイド肺炎
- ネフローゼ症候群
(卵円形脂肪体) - 粥状硬化症
- 脂肪肉腫
- 淡明細胞型腎細胞癌
- 莢膜細胞腫
- バーキットリンパ腫
- 中皮腫
- ニーマン・ビック病
など
脂肪染色に関連する試験問題
問題 66P52
脂質の染色に適するのはどれか。
1.Alcian blue 染色
2.Berlin blue 染色
3.Kossa 反応
4.PAS 反応
5.Sudan Ⅲ染色
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問題 65P55
脂質の染色法でないのはどれか。
1.Congo red 染色
2.Nile blue 染色
3.oil red O 染色
4.Sudan black B 染色
5.Sudan Ⅲ染色
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問題 69P47
親水性封入剤使用する染色法はどれか。
1.orcein染色
2.PTAH染色
3.Bodian染色
4.oil red O染色
5.Ziehl-Neelsen染色
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