【渡辺の鍍銀染色】アンモニア銀と覚えるべき試薬・工程まとめ


今回は渡辺の鍍銀染色について。
この染色のポイントは5つ!
必ずおさえよう!
渡辺の鍍銀染色のポイント
渡辺の鍍銀のポイントは以下の5つ。
- 切片の厚さ
- 厚め(6~8μm)
- 使われる試薬
- 過マンガン酸カリウム水溶液
- シュウ酸水溶液
- 鉄ミョウバン
- アンモニア銀液
- ホルマリン・鉄ミョウバン液
- 塩化金水溶液
- チオ硫酸ナトリウム
- ケルンエヒトロート
- 何を何色に染めるか
- 細網線維:黒
- 膠原線維:赤褐色
- 赤血球:えんじ
- 細胞質:えんじ
- 核:えんじ
- よく使われる臓器
- 肝臓
- どんな時に有効か
- 肝硬変
- 上皮性と非上皮性の腫瘍鑑別
渡辺の鍍銀染色の全工程
染色は全体の流れを何となく把握すると理解しやすくなります。
サラッと見ておきましょう。
(6~8μm)
線維全体の走行を見るため厚めに薄切
(酸化)
酸化して細網線維を露出させる
(還元)
酸化したので還元して綺麗にする
(増感)
アンモニア銀と反応させやすくする
(鍍銀)
細網線維に銀を付着させる
※硝酸銀を含むので注意!
(ここで解説)
(分別)
(還元)
結合した銀イオンを金属銀に還元し、黒褐色にする
(調色)
色を安定させ、鏡検しやすくする
(染色性向上)
細胞線維と膠原線維のコントラストが向上
(定着)
余分な銀を除去し変色などを防ぐ
※硫酸ナトリウムとは別物なので注意
(核染色)

まずは銀液の種類(アンモニア銀)から覚えよう!
銀を使う染色は基本的に還元剤を使う。
銀液を使う染色の還元剤を覚えておこう!
渡辺の鍍銀染色の切片の厚さ
- 【通常の切片】
3~4μm - 【渡辺の鍍銀染色】
6~8μm(厚め)
何故厚めに切るのか
この染色は線維全体の走行を見る必要があります。


厚めに切ることによって線維の走行の全体が確認できます。
厚く薄切する染色一覧
厚く切る染色は渡辺の鍍銀染色以外にもあります。
- 渡辺の鍍銀
- 神経系の染色
- クレシル紫
- クリューバー・バレラ
- ボディアン
- 脂肪の染色
- ズダンⅢ
- オイル赤O
- ズダン黒B
- ナイル青

8個覚えるの難しい人は
❶渡辺の鍍銀
+
❷神経系の染色
+
❸脂肪染色
3つで覚えよう!
渡辺の鍍銀染色で覚える試薬
細かい試薬に関しては模試でたまに出ます。
優先的に覚えるのは銀液のみです。
模試でも点を取りたい人、確実に点数を上げたい人は覚えておきましょう。
役割ごとに覚えると良いです。
酸化して細網線維を露出させる
酸化したので還元して綺麗にする
アンモニア銀と反応させやすくする
線維に銀を付着させる
結合した銀イオンを金属銀に還元し、黒褐色にする
色を安定させ、鏡検しやすくする
細胞線維と膠原線維のコントラストが向上
余分な銀を除去し変色などを防ぐ
※硫酸ナトリウムとは別物なので注意
アンモニア銀という銀は存在しません。
アンモニア銀液は硝酸銀とその他を混ぜて作ります。
【渡辺の鍍銀のアンモニア銀液の組成】
- 硝酸銀
- 水酸化カリウム
- アンモニア水
そのため『硝酸銀を含むのは?』という問題では、選択肢によっては正解の可能性も。
選択肢によってアンモニア銀として選ぶのか、硝酸銀として選ぶのかが変化するので注意しておきましょう。
※メセナミン銀も同様
メセナミン銀液についはこちら
アンモニア銀液を使う染色4つ

アンモニア銀液を使う染色は次の4つを覚えよう!
- カハール染色
- 渡辺の鍍銀染色
- ビルショウスキー染色
- Masson-Fontana染色
【アンモナイトを飼う渡辺さんがビビッて真っ青】
- アンモナイト(アンモニア銀)
- 飼う(カハール染色)
- 渡辺さん(渡辺の鍍銀)
- ビビッて(ビルショウスキー染色)
- 真っ青(Masson-Fontana 染色)


何を何色に染めるか
渡辺の鍍銀染色の一番の目的は細網線維。
細網線維を中心に色を覚えましょう。

- 細網線維:黒
(アンモニア銀) - 膠原線維:赤褐色
(アンモニア銀) - 赤血球:えんじ
(ケルンエヒトロート) - 細胞質:えんじ
(ケルンエヒトロート) - 核
(ケルンエヒトロート)
細胞線維が染まるのは渡辺の鍍銀染色以外にもあるので合わせて覚えておきましょう。
- 渡辺の鍍銀
- AZAN染色
AZAN染色の解説はこちら - Masson trichrome染色
MT染色の解説はこちら - PAM染色
PAM染色の解説はこちら
渡辺の鍍銀染色が使われる臓器
この染色は基本的に細網組織に使われます。
細網組織とは肝臓やリンパなどのこと。
細網組織の解説はこちら
渡辺の鍍銀染色では特に肝臓での出題が多いです。
肝臓で黒色があれば渡辺の鍍銀の可能性大!


肝臓は画像問題でよく出る。
画像を見て肝臓だと分かるようにしておこう!
渡辺の鍍銀染色はどんな時に有効か
基本的には次の2つ。
- 肝硬変
- 上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍の鑑別
渡辺の鍍銀染色と肝硬変
正常の肝臓は規則的に肝細胞が並びます。
これを肝細胞索と呼び、細胞周囲に細網線維が存在します。
肝臓の正常構造が分からない人はこちら

肝硬変になると肝細胞の配列が乱れます。
その乱れは細網線維を染めると分かりやすいです。

渡辺の鍍銀染色と腫瘍の鑑別
上皮性腫瘍の場合、細胞の集団を細網線維が囲みます。

非上皮性腫瘍は細胞集団ではなく、細胞1つ1つを細網線維が囲みます。

この細網線維の囲み方の違いが腫瘍の上皮性、非上皮性の鑑別に使えます。