今回は 肝臓 についてのまとめ。
肝臓は解剖も疾患も染色も画像問題でも出題される。
頻度が高い領域をおさえると点が上がりやすいからここで理解していこう!
- 解剖と構造
・胚葉
・重さ
・位置(周辺臓器も)
・肉眼構造
・門脈 - 組織像
・小葉構造
・中心静脈と肝三つ組み
・肝細胞索、類洞、クッパ―細胞
・ディッセ腔 - 疾患
・ウイルス性肝炎
・肝硬変と合併症
・がんの転移と肝臓 - 関連する特殊染色
・Masson trichrome染色
・AZAN染色
・渡辺の鍍銀
・Victria blue染色
肝臓 の解剖
胚葉
肝臓は内胚葉。
消化器は内胚葉で覚えると良い。
重さ
肝臓の重さは約1,000g程度。
実際は1,000~1,500gと幅があるが、1,000g程度で覚えても問題ない。
肝臓 と周辺臓器
肝臓は大きな臓器で周囲のいくつかの臓器と接している。
接する臓器が肝臓を押すため肝臓にはいくつかのくぼみがある。
それを圧痕と呼ぶ。
この圧痕を作る(肝臓と接する臓器)を覚えておこう。
まず以下の透かし解剖図で全体像を確認。
*透かし解剖図は僕が勝手につけた名前です。
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上の肝臓と重なる部分が肝臓と接する臓器。
圧痕を作る臓器(接する臓器)は以下の8つ。
- 横隔膜
- 食道
- 胃
- 十二指腸
- 結腸(右結腸曲、右横行結腸)
- 胆嚢
- 腎臓
- 副腎
肝臓 の肉眼像
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肝臓は被膜に囲まれるため表面に光沢があり、平滑。
さらにほとんどが腹膜にも覆われている。
鎌状間膜を境に右葉と左葉に分けられる。
裏返すと胆嚢が付着している。
肝臓と門脈・肝動脈
肝臓前には門脈と呼ばれる特殊な静脈がある。
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これは上イラストを見てわかるように周辺の消化器などからの血液が一挙に集まっている。
肝臓は栄養をため込む臓器であるため消化器で吸収した栄養を肝臓に集めるためである。
また肝臓には酸素を持ってくる肝動脈が入る。
何らかの影響で門脈に血液が流れにくくなると様々な影響が症状を呈します。
それに関しては下の記事でイラスト解説しています。
試験に頻出なので必ず覚えてください。
肝臓 の血液と胆汁の流れ
肝臓の静脈血は次の順に流れる。
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肝臓の動脈血は次の順に流れる。
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胆汁は次の順に流れる。
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胆汁のみ肝臓から外に出ていくため逆行する。
肝臓 の組織像
肝臓 の小葉構造
肝臓に実質は結合組織によって小葉という多数の区画に分けられている。
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この小葉(小さな区画)をもつ組織は次の6つ。
- 肝臓
- 膵臓
- 肺
- 乳腺
- 胸腺
- 精巣
この小葉は結合組織(膠原線維)でできており、肝硬変などではこれが増生する。
それをAZAN染色やMasson trichrome染色で検出する。
中心静脈と肝三つ組み
各小葉の中心には中心静脈がある。
小葉と小葉の間には結合組織(小葉間結合組織)に囲まれた、肝三つ組みと呼ばれるものがある。
肝三つ組みは以下の3つが一か所に集まったものを指す。
- 小葉間静脈(門脈)
- 小葉間動脈
- 小葉間胆管
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肝細胞索と類洞とクッパー細胞
肝臓の細胞は一列に並ぶ。
この肝細胞が並んだものを肝細胞索と呼ぶ。
肝細胞索と肝細胞索の間には毛細胆管や類洞という毛細血管がある。
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この類洞の中には肝臓のマクロファージであるクッパー細胞が存在する。
ディッセ腔
類洞と肝細胞索の間にはほんの少し隙間がある。
この隙間をディッセ腔と呼び、伊藤細胞が存在する。
伊藤細胞はビタミンAと脂肪を蓄える。
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肝臓 の疾患
ウイルス性肝炎
肝炎とは肝全体に及ぶびまん性の炎症性病変。
肝炎の原因は以下の4つがある。
- ウイルス性肝炎
- 自己免疫性肝炎
- 脂肪性肝炎
- 薬物性肝炎
今回はウイルス性肝炎を見ていきましょう。
ウイルス性肝炎とは
A, B, C, D, E型肝炎ウイルスの感染で発症する肝炎。感染経路や核酸に違いがある。
それぞれの特徴は以下の通り
- A型(HAV)
①牡蠣などの貝類から経口感染
②RNAウイルス - B型(HBV)
①血液、体液からもしくは母子感染
②DNAウイルス
③肝硬変や肝癌を引き起こす
④Victria blue染色とOrcein染色で染まる
Victria blue染色の解説はこちら
Orcein染色の解説はこちら - C型(HCV)
①血液感染
②RNAウイルス
③肝硬変や肝癌を引き起こす - D型(HDV)
①血液、体液からもしくは母子感染(B型と同じ)
②B型がいないの増殖できない
③RNAウイルス - E型(HEV)
①鹿、猪などから経口感染
②RNAウイルス
肝炎ウイルスマーカー
肝炎ウイルスは抗原や抗体を見ることで現在の状況を把握できる。
把握するための抗原や抗体を肝炎ウイルスマーカーと呼ぶ。
とりあえずA型、B型、C型を覚えたい。
●HAVのウイルスマーカー
①早期のマーカー
HAV-RNA
②発症中~終了のマーカー
IgM型HA抗体(HAVに対する抗体)
③既往感染のマーカー
IgG型HA抗体(中和抗体)
*中和抗体とは重症化を抑制するもの
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●HBVのウイルスマーカー
①感染のマーカー
HBs抗原
HBe抗原
②早期のマーカー
IgM型HBc抗体
③発症後期~既往感染マーカー
IgG型HBc抗体
④非活動期マーカー
HBe抗体
④既往感染マーカー
HBs抗体(中和抗体)
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●HCVのマーカー
①感染のマーカー
HCV-RNA
HCV抗体
*HCV抗体は中和抗体では無いためHCV-RNAと共存する。
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肝硬変と合併症
炎症の慢性化などで細胞の破壊と再生が起きると線維化が生じる。
すると肝臓が固くなり萎縮し、機能低下やうっ血などを引き起こす。
これを肝硬変と呼ぶ。
肝臓は様々な機能を持つため肝硬変が起きると多くの合併症が生じる。
肝硬変によって起きる合併症は主に次の6つ。
- 腹水貯留
- 門脈圧亢進症
- 黄疸
- 肝性脳症
- 女性化乳房
- 睾丸萎縮
腹水貯留
肝臓はアルブミンを産生し膠質浸透圧を保っている。
肝硬変になると膠質浸透圧が低下し、腹水が貯留する。
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門脈圧亢進症
肝硬変によって門脈に圧がかかり、傍側循環(サブ経路の血液循環)が生じ以下の合併症を引き起こす。
- 食道静脈瘤
- 胃静脈瘤
- 脾腫
- メデューサの頭
- 直腸静脈瘤
黄疸
肝硬変になると直接ビリルビンの排泄機能は低下し血管を循環する。
結果、眼球などにビリルビンが沈着し黄色くなる。
これを黄疸と呼ぶ。
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肝性脳症
肝臓は毒性のあるものを解毒している。
肝硬変になると解毒できずに毒物が脳へ到達する。
その結果、脳の機能が低下したものが肝性脳症。
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女性化乳房
肝臓は女性ホルモンのエストロゲンを分解する能力がある。
肝硬変になると分解できずにエストロゲン作用が高まる。
分解されないエストロゲンが男性の乳腺を発達させ女性化する。
それは女性化乳房。
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睾丸萎縮
肝臓は女性ホルモンのエストロゲンを分解する能力がある。
分解されないエストロゲンが作用して睾丸を萎縮させる。
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肝臓と出血性梗塞
肝臓は機能血管と栄養血管の2種類の血管で支配されている。
- 機能血管:門脈
- 栄養血管:肝動脈
二重支配された臓器は出血性梗塞が起きやすい。
肝臓も同じである。
がんの転移と 肝臓
がんの転移には大まかに3種類ある。
- 血行性転移
- リンパ行性転移
- 播種
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肝臓には血行性転移が多い。
血行性転移が起こる理由は以下のイラスト通り。
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血行性転移を起こしやすい場所は次の4つ。
- 脳
- 肺
- 肝臓
- 骨
これは以下のイラストで血液の流れを確認しておくと分かりやすい。
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肝臓 の染色
肝臓が画像もしくは問題文にある場合考える染色は以下の4つを思い出す。
染色はこのように臓器ごとに覚えると画像問題の解きに絞りやすい。
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